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posted by: - | 2009.08.06 Thursday | |
美徳の経営
評価:
野中 郁次郎,紺野 登
エヌティティ出版
¥ 1,995
(2007-05)
 わが敬愛の野中郁次郎先生が、デザイン・マネジメントではわたしの師匠でもある紺野 登さんと新著を上梓されました。フロネシス(賢慮)ということが、ここ数年、研究会でも講演でも、先生の中心トピックとなりつつあるのにふれてきました。こうやって、書籍になって、だれも手にとれるようになったことを喜んでいます。『週刊エコノミスト』(07/17号)にも書評を書かせてもらいましたが、字数の関係で、短いバージョンが掲載されています。ここに、元のちょっと長いバージョン(といっても、短い書評ですが)を掲載させてもらいました。わたし自身としては、野中先生が監訳された『出現する未来』(P.センゲ他著、講談社)にも著者として名前を連ねる、ジョセフ・ジャウォースキーの著書『シンクロニシティ』が今年中に、英治出版から出ることになったことをとても喜んでいます。どこかで通じるところがあろうかと思っています。

 以下が、書評のちょっと長いバージョンです。


野中郁次郎・紺野 登著『美徳の経営』NTT出版、2007年6月。

 日本企業が苦労を重ねて時代を経て日本的経営の無批判な礼賛論は、さすがに姿を消したが、アングロサクソン型の企業統治と経営システムを一方的に称える論調もおだやかにはなってきた。もっとバランスよい見方が必要かと思われるときに、今後の経営のあり方を考える好著が出た。
 この本の第一著者は、世界に対して日本を代表する学者で、わが国の企業組織には、精緻に体系化(あるいは、形式知識化)されていなくても、現場に豊かな暗黙知があり、革新指向のミドル・マネジャーによってトップと現場が結ばれていたことを明らかにしてきた。第二著者は、デザイン・マネジメントの研究と実践に詳しく、評者自身が、デザインやアートを競争の鍵とする企業群を英国に訪ねたときに、その慧眼と人脈に驚かされた。ふたりの著者は、これまでも、知識創造の経営とデザイン・マネジメントを融合するような分野で、折りにふれ、共著の書籍や論文を世に問うてきたが、その最新成果が、本書『美徳の経営』だ。美徳とは、「「共通善(common good)」を志向する卓越性(excellence)の追求」(p.iii)とも、「社会倫理的な徳に加え、審美性への理解、そして知的力量が融合したもの」(26頁)とも、定義される。タイトルそのもの、ずばり「美徳の経営」は、簡潔に「共通善を念頭に社会共同体の知を生かす経営」(35頁)と特徴づけられている。このテーマは難しいトピックであり、著者たちの主張は、やや理想論的でもあるので、実例に困るのではないかと思われるかもしれない。ところが、実際には、公共性、社会性を帯びた企業や、芸術や美的なデザインにこだわる経営者が、内外から例示として豊富に登場する。海外では英国のコオペラティブ・バンク、バングラデシュのグラミン銀行、わが国伝統企業では、クラレや資生堂、財閥では三井、チャーチルや緒方貞子氏のリーダーシップが取り上げられるかと思えば、世阿弥の古典や西田幾多郎の哲学への言及があったりする。美徳を実現できなかった不祥事で悪名高い会社もところどころで顔を出す。美徳は共通善と関わるで、美徳の経営は、美(やデザイン)への関心と知の復権だけでなく、企業倫理、CSRにかかわる。そんな例示を探すことも容易だ、
全編を通じて、評者自身も注目する(政治)哲学者A.マッキンタイアの『美徳なき時代』からの影響もあり、実践、物語、伝統からの学習が強調される。同時に、書物全体を彩るのは、著者たちの職人の世界や工芸への憧憬だ。しかし、意識的に理想主義的に書かれていると思われるが、その論調はけっして回顧的なものではない。将来の指針に満ちている。著者たちは、豊かな暗黙知が支えの現場の底力、モノづくりの組織能力だけでは、グローバル競争には対応できないことをはっきりと認める。そのうえで、日本企業とは、暗黙知だけにべったりと依存しているという見方を排し、暗黙知と形式知の境界線(両者の相互作用、相互変換)を強調する。
 中年以上の読者なら、美徳の実践知(practical wisdom)の追求がどこかで「よい年のとり方(サクセスフル・エイジング)」にもかかわることに気づかれることだろう。アリストテレスに遡るフロネシス(賢慮)の概念こそが、今後の美徳の経営におけるリーダーシップを支えるキーワードとなっている。それは若くしてできることではない。美徳あるリーダーになりたいのなら、齢を重ねた分経験蓄積が豊かになるだけでなく、その経験からの教訓を語り、それを自分なりの考え(持論)を明示的にもつことが望まれる。リーダーシップ育成と前向きの中年論に興味をもつ評者にはそう思われた。
 

posted by: 金井壽宏 | 2007.07.09 Monday | 23:43 |
金井・平野で日本経営協会(NOMA)関西本部で開催させていただいている研究会と、その議事録アップ
日本経営協会(NOMA)関西本部は、関西に事業基盤を持つ企業の人事スタッフが集う人事・人材開発の研究会を毎年開催しています。名称はそのものずばり「人材マネジメント研究会」といいます。シンプルでよいと思っています。研究会の創設は2000年。おかげさまで毎年多くの参加企業を得て、人事のベストプラクティスの事例研究と自社の課題をうまくリンクさせながら活発に議論するよい研究会に育ってきました。今年で第8期を迎えます。神戸大学の金井は、第1期からこの「人材マネジメント研究会」の講師兼コーディネーター役を務めており、第4期からは平野が加わりました。

研究会は次のように行われています。まず、年度末の3月にNOMAが事務局となって、参加企業のうちおよそ20社の人事部課長に企画委員に就任していただきます。委員は企画委員会に出席し、次年度に取り上げるテーマと検討します。もちろん金井・平野も議論に加わります。つまり、人材マネジメントといっても、その守備範囲は広い。そして、その主要な政策や課題も変化します。ですので、ゆるやかながらも年度のテーマを定め、どのような事例研究と議論を交わせばよいのかを決めていきます。これまでのテーマ設定は次のようになっています。

第1期(2000年) 知識創造の時代における人材マネジメント研究会
:21世紀の「人」と「キャリア」を考える
第2期(2001年) グローバルビジネスリーダーの育成と登用を考える
:次世代経営幹部のリーダーシップ開発とサクセッション・プランニングをめぐる実践課題
第3期(2002年) キャリア・ディベロップメントの課題を考える
:個人ニーズと組織ニーズの調和を求めて
第4期(2003年) これからの「戦略と人事」を考える
:SHRMの実際と人事部の役割変化
第5期(2004年) 人事・人材開発のルーツとニューウェーブを探る
:成果主義の時代のなかで
第6期(2005年) 組織の「人材力」を高める
:リーダー人材育成から現場力向上まで
第7期(2006年) ケースから学ぶ日本的人材マネジメントの叡智
:変わるべきところ、変えてはいけないところは何かを探る

次に、このテーマを研究するのにふさわしいベストプラクティス企業を選んでいきます。研究会は、6月から10月にかけて、事例を提供していただくゲスト企業を毎回1社お招きして5回行います、例えば、昨年度であれば「日本的人材マネジメントの叡智」のテーマのもとに次のようなゲストをお迎えしています。

1回目 楽天        執行役員人材本部長  中島 豊氏
2回目 日立製作所     労政人事部部長代理労政人事部部長代理 田中憲一 氏
3回目 GEリアル・エステート 人事マネージングディレクター(アジア・太平洋担当) 
平田和子 氏
4回目 帝人        人財部長 武居靖道 氏
5回目 ヤマト運輸     執行役員人事総務部 山内雅喜 氏

参加企業は年度の問題意識を共有しながらも、ゲストの発表をただ単にベストプラクティスとして受けとめるではなく、自社への応用可能性を常に意識しディスカッションしていきます。昨年度であれば次のような金井と平野の問題意識を参加者と共有しています。

金井       90年代以降、多くの日本企業において成果主義の導入をはじめとする人事改革が行われてきましたが、最近では日本的な良さをうまく残しながら優れたパフォーマンスを発揮している企業に注目が集まってきています。この日本的な良さは何なのかを実践のなかの知恵に探りながら、「日本的人材マネジメントの叡智」として抽出していくことが、この研究会の大きな目的のひとつです。また、一方ではアメリカ型の人事の強みと最近の変化についても学び、日本企業が変わるべき点についても議論していきたいと思います。
丁度いま、このテーマを考えるうえでの良書(参考図書)が出てきました。そのひとつは、この研究会のもう一人の講師である平野先生の本です。そこで今年の研究会では、理論についても深く学びながら、日本の人事が変わるべき点、変えてはいけない点をしっかり議論し、今後の戦略的人材マネジメントのあり方を共に考えてまいりたいと思います。

平野     企業の人事スタッフには、好業績企業のベストプラクティスを学び、自社に取り入れようとする傾向が強いように感じています。私はこの傾向を指して「人事は流行に従う」という言い方をしておりますが、他社(とりわけアメリカ社会における企業)でうまくいった事例が自社でも有効に機能する保証はありません。そこで、事例を表層的に学ぶのではなく、各々の企業における仕組みの本質を探り、それがどのようにしてパフォーマンスに影響しているのかというロジックを探っていく必要があります。
 この研究会では、各々の企業の取り組みについてディスカッションする場を通し、互いに学びを深めていきたいと考えております。そして、様々なタイプの企業を比較研究するなかから、「日本的人材マネジメントの叡智」というべきもののエッセンスを見つけていきたいと思います。


この研究会は、2年目からは金井ゼミの大学院生の書記をつけて、3年目からは、書記が起こした原稿を、ゲスト報告者のチェックを経て冊子にして残してきました。報告書は、研究会のメンバーでシェアしています。毎回のすばらしい報告を記録した冊子はこの研究会の知的資産でもあります。そしてこれを研究会の中で留めておくのではなく広く公開していきたい。ですので、できればこれをウェブ上で公開していきたいということを、NOMA関西本部と報告者にお願いをしてまいりました。

NOMA関西本部長の大谷一雄さんのご理解とご支援、また、この第1期からこの研究会の事務局をずっとしてくださっているNOMA関西本部の浅川知洋さんの尽力、そしてご報告者のご理解のおかげで、順次、KIMPSで公開できるものは掲示することができるように手はずが整いました。おふたり、ならびにご報告者としてご登壇いただき、報告書のためにチェックしていただくばかりでなく、今回ウェブに載せることにもご承諾をいただいた方々に、心より感謝いたします。この報告書の記録をもと人材マネジメントの議論がさらに広がることを願っております。

なお、今年「第8期 人材マネジメント研究会」のテーマは『「モティベーション」の視点から考える人事の課題―人事から会社の元気をうみだすには―』です。
ゲストスピーカーとして次のような素晴らしい方々をお迎えします。

第1回 全日本空輸蝓
オペレーション統括本部OCC推進室 品質サポート部
    部長 小澤 美良 氏
    「現場の持つ可能性を最大限発揮するために」

第2回 螢螢鵐アンドモチベーション
モチベーションマネジメント・ウエスト事業部
    事業部長 水田 道男 氏
    「自立した個人と超活性化組織の創り方」

第3回 伊藤忠商事蝓
人事部 キャリアカウンセリング室
    室長 浅川 正健 氏
    「人事が個人のキャリアやいきがいをサポートするには」

第4回 ダイキン工業
人事部長 佐治 正規 氏
    「グローバルに「フラット&スピード」を実現する人と組織のマネジメント」    

第5回 トヨタ自動車
   人事部長 宮崎 直樹 氏
   「現場力向上に向けた人事諸施策の推進」

今年もまた多数の人事スタッフの皆様の参画を得られれば幸いです。詳しくは、NOMA「人材マネジメント研究会」のウエッブ・サイトをご覧ください。

これまでのこの研究会での活動記録の一部を、NOMAさんと報告者のご許可を得られたものだけは、これから順次、アップしていきたいと思っております。

その第一弾は、平野さんの平成14年10月22日におけるご報告で、そのときのテーマは、「キャリア,人事,戦略を統合的に考える」というテーマでした。どのような形で、アップするか、またご連絡いたします。
posted by: 金井壽宏 | 2007.06.16 Saturday | 19:44 |
キャリアの節目とモティベーションの自己調整
 このブログのなかで、.皀謄ベーションの自己調整と節目のキャリア・デザインというふたつの繋がりについて、日頃考えていることと、△泙拭△海里海箸某爾かかわるワークショップが神戸大学で開催されることについて、記しています。後者については、高橋さんのブログにも案内があります。最初に、一言お願いなのですが、この会合について、事務局の現代経営研究所(担当、若命;メールアドレス=bi@riam.jp; ファックス番号=06-6201-8687)に問い合わせや申し込みをされるときには、必ず「KIMPSブログを見た」と明記なさってください。当日の受付準備の都合上です(当日も受付でも、「経営人材研究所(KIMPS)経由で申し込んでいます」とおっしゃってください)。
 
 野暮な出だしですみませんでした。さて、以下が本題です。

 モティベーションは、どんなにやる気満々のひとでも、時系列で見れば、アップダウンがあります。いつもハイテンションだとすり切れるし、いつもダウンなら、生きていることになりません。モティベーションはそういう意味ではリズムを伴うダイナミックなプロセスです。神戸大学では、わたしと大学院生の森永雄太さん、それから金井ゼミ卒業生で会社を経営している佐藤栄哲さんとで、モティベーションの自己調整という観点からデイリーのやる気データを集めています。だれだったアップダウンがあり、そして、アップダウンの理由を語ることができます。自分のやる気がどんなときに上がり、どういう場面で下がるかがわかれば、自分のやる気を自己調整するために、自分のモティベーション持論を持つ第一歩を歩んでいることになります。

 もっと時間幅を長くとると、人生やキャリアにもアップダウンがあります。ライフラインとかイキイキチャートと呼ばれる簡単な方法で、これまでの自分の歩みを振り返ると、だれだった、山有り、谷有りではないでしょうか。しかも、モティベーションの自己調整のときと、同様に、下がっているきっかけ、上がり始めた理由を語ることができます。つまり、イキイキチャートの折線になっている部分には、ライフイベント(異動、昇進、左遷、病気、引退など)があります。そして、だれもが折線のところで、契機、下降や上昇の理由を語れます。

 モティベーションを自己調整し、キャリアを節目でデザインすることをわたしはこれまで奨励してきましたが、今、マイナス極では、モティベーションの低迷がキャリアの節目の苦労にかかわっているとき(たとえば、くぐるのに苦労する大きな節目)、プラス極では、モティベーションの高揚が人生の節目の喜びにかかわっているとき(多くのひとがイキイキチャートで、第1子の誕生で、仕事もがんばらなきゃという気になったと述べられます)のように、キャリアの節目がモティベーションの変曲点と重なるところにおおいに興味があります。陸上競技にたとえて、モティベーションが瞬発力、キャリアが持続力だとしたら、瞬発力のアップダウンと、キャリアのアップダウンが重なるときがあります。どっちもダウンのときはたいへんです。

 きっかけは、職場の高橋潔さんとわたしの研究室で博士号を修めた小川千里さんをリーダーとする研究グループが、Jリーガーに焦点を合わせてトップアスリートが引退の節目をどのように乗り切ったかについて、とても深い、深い、インタビュー調査をしておられることです。わたしも、何名かのインタビューの同席させてもらって感動しました。いっぱい力をもらいました。たいへんなところをどうくぐったかを語り終えた調査協力者も、語ってよかったと言ってくださるのがとてもうれしいです。そんなインタビューは、しばしば、3、4時間もの長さに及んでいます。小川さんの聞き方がていねいでうまく共感的だからでしょう。

 さて、神戸大学では、今週の週末の6月17日に、高橋さんの企画で、この下に引用(ペースト)するような集中研究会(ワークショップ)を開催します。その結果は、神戸大学大学院経営学研究科が中心になって組織している現代経営研究所の機関誌『ビジネス・インサイト』に後日、掲載されます。でも、関西にいて、ライブでご覧になりたいと思われる方は、つぎのアドレス宛で、現代経営学研究所ビジネスインサイトワークショップ事務局の若命さん宛に問い合わせてください(現代経営学研究所 )。問い合わせれば、おわかりになるとおり、大学で開いている会合の割に高いのが、内部者のわたしもちょっといつも気がかり、かつ気に入らないのですが、ご理解いただくための一言といたしましては、大学も自主財源がいるため、こんな風になっています(せ・ち・が・ら・い)。なお、事務局の若命さんとのやりとりのあと、日程的に可能で、出席なさりたい場合には、「経営人材研究所のブログを見て、問い合わせ、もしくは申し込みをしています」と必ず明示してください(事務局の受付準備の都合上)。ともあれ、高橋さんもわたしも、下記のペーストのとおり、すばらしいゲストをお招きできるこの会合を最高のものにしたいと思って、全力投球します。

 トップ・アスリートが若い時期に引退するときに、その節目で生じる空白感覚は、ただ
やる気が減衰するというモティベーションの自己調整だけの問題でなく、この引退というキャリアの大きな節目に空いた穴(現役の選手のときには埋まっていたところ)をどう埋めるかという見通しを構成する必要のある時期です。

 頂点を極めたようなアスリートから、いっぱい感動的な話をお聞かせいただき、気づきが深く、いただける元気も純粋なそういう一日になったらと期待、希望しております。




<ここからは神戸大学の同僚で、MBAの組織行動をいっしょに担当している高橋 潔さん執筆の趣意書より、ペースト> →高橋さんが、わたしの書き込みに先立って、ブログに投函してくださっていました。高橋さん自身の趣旨の説明は、そちらをご覧ください。

現代経営学研究所 第58回ワークショップ
「トップアスリートのキャリア・トランジションから学ぶ」
日時:2007年6月17日(日) 13:30〜17:00
場所:神戸大学大学院経営学研究科 本館102教室 共催:神戸大学大学院経営学研究科

 このワークショップでは、トップアスリートが抱えてきたキャリア面での問題点を明らかにするとともに、そこから、人生設計・キャリアデザイン上での示唆を得ることを目的としています。多数の皆さまのご参加を期待しております。 

 プログラム
13:30〜13:40 テーマ説明 高橋 潔   (神戸大学大学院経営学研究科 教授)
13:40〜14:20 問題提起  金井壽宏   (神戸大学大学院経営学研究科 教授)
14:20〜14:40 コーヒーブレイク
14:40〜15:00 登壇者ご紹介
15:00〜16:40 パネルディスカッション
16:40〜17:00 質疑応答

パネリスト:田中ウルヴェ京 氏(メンタルトレーナー、株式会社MJコンテス取締役
               日本大学医学部講師、ソウル五輪シンクロデュエット銅メダリスト)
西野 努 氏(株式会社オプト・スポーツ・インターナショナル代表取締役、元浦和レッズ)
林 敏之 氏(NPO法人ヒーローズ 理事長、株式会社神鋼ヒューマン・クリエイト コンサルタント、
       元ラグビー日本代表)
金井 壽宏 (神戸大学大学院経営学研究科 教授)
司会:高橋 潔  (神戸大学大学院経営学研究科 教授)
           

講 師 略 歴(プログラム掲載順)

田中ウルヴェ京(たなか うるゔぇ みやこ)氏 
メンタルトレーナー、株式会社MJコンテス取締役、日本大学医学部講師、
ソウル五輪シンクロデュエット銅メダリスト

‘88ソウル五輪後、現役引退。89-99日本代表チーム、アメリカ、フランス代表コーチを歴任。7年間の米国留学中に3つの大学院にて、キャリアプランニング、認知行動療法を学ぶ。シンクロTV解説者としても有名だが、専門はスポーツ心理学。著書・訳書多数。
http://www.mjcomtesse.com/


西野 努(にしの つとむ)氏  
株式会社オプト・スポーツ・インターナショナル 代表取締役、元浦和レッズ

県立奈良高校、神戸大学経営学部を卒業して、Jリーグ初年度に浦和レッドダイヤモンズ入りした。1993年から9シーズンにわたって浦和レッズでセンターバックを務める。日本代表候補にも名を連ねる。現役引退後、浦和レッズのスカウトを経て、2003年8月、MBA取得のために渡英。2004年11月、リヴァプール大学フットボール・インダストリーズ・MBAを取得する。現在は、自身の会社の代表取締役をつとめる傍ら、講演・執筆活動・大学講師など多方面で活躍中。


林 敏之(はやし としゆき)氏 
NPO法人ヒーローズ 理事長、株式会社神鋼ヒューマン・クリエイト コンサルタント、
元ラグビー日本代表

1960年2月8日徳島県生まれ。徳島県立城北高校→同志社大学→神戸製鋼所。異名は「壊し屋」愛称は「ダイマル」白いヘッドキャップと口ヒゲがトレードマーク。大学3年から日本代表のロックとして活躍。日本代表を13年間務め、代表キャップ38。神戸製鋼の7年連続日本一にも貢献。90年、オックスフォード大学留学中にケンブリッジ大学との定期戦に出場しブルーの称号獲得。オックスフォード歴代ベスト15、世界選抜にも選出、92年には英国の名門バーバリアンズ・クラブに招待された。同志社大学・神戸製鋼・日本代表ではキャプテンを務めた。蠖盛櫂劵紂璽泪鵝Εリエイト勤務。NPO法人ヒーローズ設立、理事長に就任。感性教育をテーマに活動している。

 よい会合になりますように祈りつつ、当日をわたし(金井)も。高橋さんとともに、楽しみにしております。










 
posted by: 金井壽宏 | 2007.06.12 Tuesday | 18:13 |
働くのによい場について信頼できるランキングがこの国にもあれば
働くのによい場について信頼できるランキングがこの国にもあれば、いったいどう思われますか。

ほんとうに役に立つ情報は評価情報だとよく言われます。たとえば、新しい土地に引っ越した家族に役立つ情報は、ただ単に、どこに医院があるか、どこに美容院があるか、という無職透明な情報ではありません。どこの医者が感じ悪いきびしい医者だがいい医者で、どこの医院はとてもきれいけれど、そこの医者はヤブだとか、そういうことを聞きたいです。同様に、美容院についても、たとえば、「小さい子を連れて行って、子どもがちょろちょろしてもだいじょうぶな美容院といえばあそこがイチオシだ」みたいな情報を、知りたいはずです。それが役立つ情報です。

昔から、消費者としてわたしたちがときどきは買いたいものがテーマになっている雑誌を手にするときも、知りたいのは、結局、どこの会社がどういう冷蔵庫をつくっているかではなくて、ずばりどこの冷蔵庫がいいのか。いい順からランキングしたら、上位10機種はどうなるかを知りたいのではないでしょうか。だから、たとえば、『特選街』みたいな雑誌でも、勇気を持ってそういう評価情報を載せます。「勇気を持って」といった理由は、たとえ上位10位に入っていたとしても、8位の会社は、「なぜうちが3位に入っているライバル他者より、ランキングが下なのか」と当然のように、おしかりを受けるからです。評価の対象となった商品をつくっている多数の会社から、問い合わせ、場合によってはクレームがくるでしょう。それを見越しても出しているのだから、勇気がいります。空勇気(空元気)でないためには、クレームにもめげないぐらい、いい調査に基づいて評価がなされている必要があります。美人コンテストではないのですから。

覚悟のうえで評価情報を載せるのが肝心だと言い直してもいいでしょう。覚悟が空回りしないためには、どのような基準に基づいて、実際にだれにどのような調査を行って、できあがったランキングかを、胸を張って説明できることが大事です。

アメリカ人は、(ちょっと軽薄なようにも見えますが)楽しむ気持ちでなんでもランキングしたがります。病院のランキング、クリエーティブ・クラスが住みやすい都市のランキング、MBAのランキングなど。ボストンにいれば、マサチューセッツ・ゼネラル・ホスピタルが上位に入り、クリーティブなひとの魅了度でも街としてもボストンそのものが二位に入ってきたり、また地元のハーバード大学やMITのMBAが上位に入ると喜びます。でも、それでも、(わたしも3年過ごした)MITのひとたちは、いつもMITのランキングがハーバードほど高くないのをぼやきます。どういう調査なのか、と言いつつ。たとえば、だれに聞いたうえでのランキングなのか、まっとうな質問もあれば、単なるクレームも出てきます。質問としては、「だれに聞いたのか」というサンプリングの問は、意味のある問です。もしCEOにどこのMBAがいいのか聞けば、当然、毎年の卒業生の人数がダントツに多く、ペンシルバニア大学に継ぐ老舗で、しかも、卒業生の累積総数が多いのも反映して(また、入学時の選抜と教育のよさももちろん反映して)実際にハーバードMBAでCEOになっているひとが多ければ、ハーバードがCEOを評定者としたランキングでは上位に来て当然でしょう。また、採用担当に質問してランキングをすると、MITのMBAは、「賢くてなまいきだから」と思われれば、いっそうランキングが低く出るかもしれません。評価情報であるからには、評価がひずんだものであってほしくないという思いは、正当です。わたしはわたしなりに、勤務校の神戸大学がMBAのランキングにあがると、やっぱり気になるものです。

さて、違う領域ではどういうものをみたいですか。評価情報として。

はじめてジョブマーケットに出る学生さんにとって、ある会社で数年がんばってきたけれど、働く場としてイマイチなので他の会社への転職を考えている若手にとって、どういう情報が有益でしょうか。会社についても無味乾燥な情報ではなく、ずばり、働くところとしていいのかどうか知りたいでしょう。そんな風に考えているひとがこの国にもおられて、わたしの研究室に、ある時期ある新聞社のひとが足繁く4、5度こられました。ワークプレース・バリュエーター(働くところとしての評価尺度――算定式とスコア、それに基づくランキングを含めて)をつくりたいという用向きで。わたしが関与する形では立ち上がっていませんが、興味があります。難しい課題はあるでしょうが、そういう動きに関心はあります。

これとは種類が違うのですが、プリズムのような優良企業のランキングや、一橋大学の伊藤邦夫さんが日経新聞とつくったコーポレート・バリュエータみたいなランキングもすでにあります。伊藤さんは、自分にとってこれをつくったことは、わが「プロジェクトX」というほど、熱い想いによるのだと、よくおっしゃいます。

だから、組織行動論を専攻して、人材マネジメント、それからキャリア発達、学生の就職活動にも興味をもつわたしにとっては、ワークプレース・バリュエーターみたいなものへの希求がいつもどこかにあるわけです。

そして、皆さん方も、日経ビジネスなどにたまに紹介されたりします(2007年2月19日号)ので、米国には、GPTW(Good Place to Work)というプロジェクトがあり、それの担い手として、Great Place to Work Instituteという機関(GPTWI)があり、ランキングがこんな「ワークプレース、プレース・トゥー・ワーク」という分野でも存在することを耳にした方がおられることでしょう。

この問題に詳しい斎藤智文さんによれば、GPTWでは、「働くのによいところ」を、「従業員が勤務している会社や経営者・管理者を信頼し,自分の仕事や商品・サービスに誇りを持ち,一緒に働いている仲間と連帯感を持てる会社」と定義し、1998年より毎年一回、1月号の『フォーチュン』誌に、働く場として最もよい会社、上位100社をランキングしている。その調査に対して、昨年では500社のエントリーがあったそうです(http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20070608/274140/)。この数字は多いのか、少ないのか意見がわかれるでしょう。わたしは、導入してから10年近くも経過していること、『フォーチュン』誌という雑誌の可視性が高いこと、経営者もこれから就職・転職するひとも大いに関心をもつ情報であることを鑑みると、まだ500社というのは、少ないと思います。だから、期待は大きいがもっと信頼できる評価法が継続して求められているのかもしれません。納得がいくものができれば、実際に働くところとしていい会社だと自負している会社がどんどんエントリーしてくるでしょう。

 経営者や人事担当、とりわけ採用担当は、こういうランキングがあれば、すごく気になるはずです――ランキングが低くても高くても。今ある就職活動に関するランキングは、学生からの人気を見ているだけですので、それとはひと味違うGPTWみたいなものがこの国でもできれば、個人の側にとってもニーズは高いでしょう。

人びとがイキイキしているのかどうは、ひとりひとりの個人の問題でもあるが、そういうひとが大勢いる会社と、概してイキイキしているひとが少ない会社があるとしたら、そういうランキングはみたいと思う学生も、また転職を考えるひともいるはずです。測定は、公表データではわからない部分があって、調査の必要があります。だから、ランキングに耐える調査に現時点のGPTWがなっているのかどうかが当然、日本でもそういうランキングができ始めたら、おおいに話題となるでしょう。各社ごとにどのようなサンプルをどのように選び、そのひとたちからどのようにデータ収集し、いかなる回収状況で、そして、肝心なことだが、ランキングのためにどのような算定式が用いられたのか、それは適切なのか、ということが議論になるだろうし、そのための素材がある程度、オープンにされる必要が将来出てくるでしょう(今は、まだ日本版GPTWは実験段階というところなのでしょうか)。

 米国の取り組みがどの程度信頼できるものであるのか知るためには、GPTWIという機関を訪ねるべきでしょう。

働くのによい場について信頼できるランキングがこの国にもあれば、どうなることでしょうか。ちょっと考えてみてください。

posted by: 金井壽宏 | 2007.06.11 Monday | 15:36 |
河合隼雄先生のご快癒を祈る気持ちが届きますように
 六甲会議ですごいインパクトを受けた北岡伸一先生、また、村上和雄先生のことを、書いてきました。すごいひとに出会った感動というのは、なかなかそこに居合わせないと、迫力、熱気をお伝えできません。それでも、なにに感銘したかを、自分としても言語化しておきたいと思いました。あまりうまく書けているかどうか、うまく肝心なことが伝わっているかどうか自信はないですが。

 ところで、この六甲会議で、昨年、河合隼雄先生にお会いできたことがとてもうれしく、また、それとは裏腹に、そのあと、先生がご病気で入院されたというニュースがとてもショックでした。河合先生のご門下で臨床心理学の世界にいる東大の倉光修さんや、この4月から神戸大学にこられた森岡正芳さんから、ご容態についてお聞きしました。また、六甲会議の間では、経営者の方のなかでは、河合先生に最も親しい(元サントリー副社長の)津田和明さんからも、すごく親身にいろいろお教えいただきました。思えば、津田さんのおかげで、昨年度の六甲会議には、文化庁長官としてお忙しいなか、神戸まで来てくださったのでした。

 このように河合先生に近しい回りの皆さんが快癒を祈る気持ちに、自分の気持ちもあわせようと思って、まずは、新聞記事のあと、毎日、必ず河合先生の書いたものを読むことを始め、その後、気持ちを連ねるために、金井ゼミでも、ゼミ生全員で『神話の力』を読みました。また、わたしからは大先生ですので、通常は、わたしから先生へ年賀状を差し上げるだけですが、病院におられることを承知のうえで、年賀状を差し上げました、この正月は、先生の奥様から、お返事がきました。たいへんな数の年始挨拶が賀状で届くと思うのですが、これもまた、祈る思いで奥様は、この年こそ全員にお返事されたのではないかと思ってしまいました。

 わたしは、臨床心理学者にはなりませんでしたが(あるいは、なれませんでしたが、というべきでしょうか)、1974年から3年間連続して、河合隼雄先生の臨床心理学概論を取りました。一生で、最も影響の深かった講義でした。先生と対談させていただく機会がありましたときに、その当時のノートをお見せしたら、それを手にしてながめながら、「このひとすごいね、いい講義してはりますなぁ。おまけに、こんな昔から、シラバスまでつくって、たいしたもんだ」と言われました。

 先生は、通常たぶん、ご門下とは、対談されないと思うのですが、わたしは、自分が臨床という世界で生きているわけではないせいか、1998年に、「新しいミレニアムの『人生』のために」という対談の機会をもたせてもらったことがあります(つぎをご覧ください。https://www.shc-creo.co.jp/webcreo/backnum/index.html)。

 また、岩波書店から第2期の河合著作集の出版に際しては、第10巻『「日本人」という病』には、つぎの文章を寄稿させていただきました(選集に挟み込まれている栞風の冊子、毎月の配本ごとの月報のなかに所収)。退院される日、お元気なお姿を拝見できる日の一日も早くくることを祈る気持ちで、それをウェブに載せたいと思って、岩波書店さんに問い合わせましたところ、著作集月報に掲載されたものであることを明示すれば、アップしていいというご許可をいただきました。経営学で組織行動論をしていても、どこかで組織と組織で働く人びとにクリニカルに接しているところがありましたら、それは先生から学ばせていただいたことのおかげと思っております。学恩に感謝しつつ、祈る気持ちを添えて、その月報への文章をここにペーストします。



『河合隼雄著作集 第2期』に寄せて
            深いことをおもしろく語れるひと

                                  金井 壽宏

 今、日本の国に元気が乏しい。臨床心理学や経営学、あるいは両者の結びつき(ありえるなら)が、この国の元気に貢献できたらいいなぁと思いつつ、河合隼雄先生との出会い、久々の出会い(対談)、最近の経営精神分析という動きについて、『河合隼雄著作集 第2期』が配本されている機会に、ちょっと述べさせていただきたい。
河合先生による臨床心理学概論の講義を学生時代に3年連続で聞いたひとはたぶん、珍しいのではないだろうか。わたしは、この学問分野をこの先生から学べることを希望に京都での生活をスタートしていた。1974年のことだ。受験の日にも当日の監督の先生のなかに、河合先生のお姿があり、メダルト・ボスとユング派とのかかわり有無を尋ねしまった――「そういう問いは、大学に入ってからにしてねー」というお言葉を頂戴した。入学してから先生の研究室に明かりが灯っていると遠慮なくノックした――あつかましかったことお許しください。そしたら、黒いカバーのついた英訳のユング全集からこれをまず読んだらと、分析心理学にかかわるエッセーを示された。それから、待望の講義。毎週が楽しみだった。
 先生は、毎回の講義のはじめに本論に入る前に、その1週間の間でもっとも心惹かれた出来事について話をされた。たとえば、あとから本(『魂にメスはいらない』)になった谷川俊太郎氏と対談した直後の講義では、そのときに感じられたことを話された――「世の中には学校にいかないほうがクリエーティブになることもあるのに、われわれは、心理教育相談室に来た子どもを学校にもどすことを目的のように考えがちだ。それでいいのか」というようなことを言われた。別の日には、中根千枝のタテ社会論がずいぶん誤解されているといって、「たとえば、いっしょに食事をしているときに、目上のひとがハシをつけるまで、みなハシに手をつけない。上のひとだけが自由だ、みたいにいうが、実際には、タテ社会の上は、みんなを見て、いつハシに手をつけるのがいいか考えているのだよ」というようなことを述べられた日もあった。
 学問そのものが若く、先生の語り口が新鮮でそして深く、しかも楽しかった。深いことをしんどく語るひと、軽いことを軽妙に語るひとは、わんさいるが、河合先生ほど、深いことをおもしろく語れるひとはいないだろう(そう言えば、先生ご自身がトリックスターみたいなところがあるので、好んでウソツキ学会やナマケモノ学会の話をよくされる――ほんとうにそういう学会があって、先生は会長をしているのだろうか)。ひょっとした4年ずっと聞かれたひとがいるかもしれないが、学問をいっぱい吸収したかったすごく若い時期に、3年間連続で先生の講義を聞いて、ユング心理学だけでなく、ずいぶん体系的に臨床の知にふれられたのは、わたしの学生時代における最高の幸せで、それは、今もいいパーソナルな知的アセッツだ。産業界で人事の分野で活躍中の(ワトソンワイアット社の)川上真史さんは、京都大学で心理学を勉強すると、学部でも十分に修士レベルの知識が身につくことにすごく感謝していた。
 卒業後、敬愛の先生と僭越にも対談をさせていただく機会をいただき(後に書籍に収録された――『あなたの生き方を変える』)、そのおりに学生時代の先生の講義からとったノートのコピーをお渡しすると、「いやぁ、すばらしい。当時からきちんと教えていますねー。シラバスみたいな授業プランのリストもあって、こりゃすごい」とご自分でもなつかしそうに、でも、しっかりご自分を誉めておられる笑顔がすばらしかったです。
さて、先生にまつわる最近のニュースとしては、フルートのCDをとうとう昨年出されたというのを除くと、なんといっても、文化庁長官に就任されたことだろう。わが国の元気が衰え、また、その時期が長く続いている。しかし、天下や国家に元気がないというのは言葉の綾で、元気の大元は働くひとりひとりの個人の心理のはずだ。だから、長官に就任直後の談話で、「文化を通じて、経済や景気を元気づけよう」という先生らしい提案にさっそく勇気づけられた。確かに、文化にお金を使えば、お金が動くし、そこから元気が出てくる。そういう元気の出る文化がいい文化なのかもしれない。音楽でも、演劇でも、小説でも、絵画でも...もちろん浅くて、カラ元気だと困る。一見すると深淵だが、深さゆえに心の奥から出てくる元気というのがある。文化やスポーツ・イベントのなかに、そういう心からの元気の種がありそうだ。
 かつて、ラグビーの日本代表の監督で新たな壁にぶつかっていた平尾誠二さんを元気づけようという企画があって、平尾さんがこのひとに会えば元気になるという対談の相手の筆頭が、河合先生だった(これも、そのまま本になった――平尾誠二『日本型思考ではもう勝てない』というタイトルで――誠に光栄なことに、この企画でわたしも平尾さんの相手に選れた)。その平尾さんが、最近、指揮者の佐渡 裕さんと会っていると元気になると言われる。わたしも、たとえば、佐渡さんが新星日本交響楽団で棒を振った『オーケストラの鼓動』(書籍とビデオのセット)で、ショスタコーヴィチ交響曲5番「革命」の演奏や練習(さらには、リハーサル風景の録画を見ながらの佐渡さんの解説)を聞いていると、深いのに元気が出る。深いからこそ芯から元気になるのだろうか。そして、佐渡さんは、河合先生と話すと、深く考えさせられながらも、やっぱり楽しく元気の「おすそ分け」があると言われる。たぶん、「おすそ分け」というよりも、元気が対話のなかから、「湧き出る」のかもしれない。そういう先生が「文化を通じて、経済や景気を元気づけよう」と言われるときに、(生意気なようだが)どこかでわたくしがやっている経営学とも接点が生まれるといいなぁと希望がふくらむ。
 わたしは、経営学のなかで組織行動論と呼ばれる領域で研究と教育をおこなっている。組織のなかの人間行動という分野なので、基礎になる理論は、心理学や社会学だ。そして、それを経営や組織という現象に応用しようというわけだ。だから、米国のビジネス・スクールの博士課程には、わたしがトレーニングを受けたMIT(マサチュセーッツ工科大学)でも、組織行動論は応用領域なので、「組織と仕事の心理学」、「組織と仕事の社会学」というペアの科目がある。わが国ではあまり知られていないが、精神分析を経営や組織に応用していく動きが欧米にはあり、理論面でも実践面でも一定の成果をあげつつある。精神病理学や臨床心理学の分野で、ロンドンのタビスック・クリニックならよく知られているし、メラニー・クラインの名前とあわせてそれを思い出すひとも多いだろう。しかし、タビストックにはクリニックだけでなく、タビストック人間関係研究所(Tavistock Institute of Human Relations、簡単にインスティチュートという)というのがあって、そこでエリオット・ジャックス、エリック・トリストなどが、組織の変革や組織の病理、組織の元気づけについて、研究してきた。初期には、このクリニックとインスティチュートには実りある相互作用がいっぱいあったので、臨床の知が経営や組織の場に適用されてきた。ウィルフレッド・ビヨンなどは、その両者の架橋となるようなグループ研究をおこなってきた。思えば、ハーバード大学が1940年代、50年代に人間関係論の調査(ホーソン実験)をおこなったときに、その指導的研究者だったエルトン・メイヨーとフリッツ・レスリスバーガーは、それぞれ精神科医と臨床心理学者だった。レスリスバーガーの弟子でハーバード大学教授のエイブラハム・ゼイルズニックは、経営学者でありながら、カール・メニンガー・クリニックで精神分析家の資格をもっている。そのさらに弟子のマンフレッド・ケッツ・ドブリース(『会社の中の困った人たち――上司と部下の精神分析』『権力者、道化師、詐欺師――リーダーシップの精神分析』などの訳書がある)などが中心になって、1987年には、IPSO(The International Society for the Psychoanalytic Study of Organization、精神分析を応用して組織や経営や仕事の研究をしている研究者の国際学会)が設立された。こういう動きについて、いつかまた先生とじっくり話し合ってみたい。
 わたしが3年連続で聞かせていただいた講義のなかで、そのときは、20歳前後なのでとてもわかったとはいえなかったが、エリオット・ジャックスの「中年の危機」というアイデアを学んだ。その同じジャックスが、グレーシャー・メタルという会社の組織変革や、責任の大きさと給与不満のい研究などをおこない、経営学にも大きな足跡を残しているとは知らなかった。
 わたしに与えてくださった貴重な対談の機会に、(対談集ではスペースの都合でカットされたが)先生は、つぎのようにもご発言された。「ひとりひとりの心の問題だけでもこんなに深みがあって、際限なく興味深いので、そういうの(産業や経営にまつわること、金井注)は、金井君らがやればいい。だけど、日本人に創造性がないかのような議論をする欧米のひとがいるので、日本には創造性が欠けるのではなく、日本人ならでは創造性がある、それを解明する一環として、経営者の創造性について調査がありえるなら、興味がある」というようにご発言された。「先生ご自身は、産業、経済、会社にかかわることには、興味をあまりもたれないのですか」というわたしの拙い問いに、こんな風に答えてくださった。先日、関西の経済団体のある会合で、サントリーの相談役が河合先生が文化庁長官になって、格調高くなったと述べられた。それでは、わが敬愛の河合隼雄先生、格調高く、おもしろく、元気に、知的世界にも、この世の中にも、リーダーシップを取り続けてください。(以上、『河合隼雄著作集第II期、月報8、第10巻(「日本人」という病』)、2002年11月、5−8頁)


注 サントリーの相談役とここに記させていただいていますのは、言うまでもなく、津田さんのことです。津田さん、いつもありがとうございます。(この二行は、2007年5月14日のメモ)
posted by: 金井壽宏 | 2007.05.15 Tuesday | 00:05 |
笑いは笑いごとではない−−生命科学者村上和雄先生に学ぶ
 六甲会議での北岡伸一先生のご報告についてふれたあと、もうひとりのすばらしい発表者であった村上和雄先生について書こうと思いつつ日が経ってしまいました。

 書くのが遅れましたが、その間に、先生の本を、5冊、読みました。どれもすごいと思いましたが、ここは、六甲会議の当日、4月20日にお聞きしたときの自分のメモ用紙を頼りに書いてみます。

 50年も生命科学の最前線で活躍してこられて、最近は、吉本興業さんとお笑いがもたらすポジティブな効果の研究までなさっておられるのが村上先生の最近の姿だそうです。実験はまじです。大学の先生のおもしろくない講義を糖尿病のひとに聴いてもらうと血糖値が123mgあがったそうですが、漫才師のBandBに出てもらうと、77mgしかあがらない。46mgの差があり、笑いはポジティブな遺伝子のスイッチをオンにする効果があるかもしれないと、考えておられる。お笑いのDVDを作成し、それで血糖値が下がり、医療費が下がり、しかも、笑いには薬のように副作用がないので、笑い誘発ビデオを、DVDを、本気で広めておられます。(わたしも入手したいと思っています)。日本お笑い学会にもさっそくお入りになる一方で、きちんとアメリカの雑誌にもこの実験は載ったそうです。まともな医者はしないことだが、薬より笑いがいいという立場で研究を推進。

 「笑いはけっして笑い事ではない」という言葉。プラトンも、カントも、フロイトも笑いについて書いているそうです(わたしは、そういう風に読んだことがないので、初めて聞きました)。おまけに胎児も笑う。生まれつきの赤ちゃんもにっこり笑う。お母さんに喜びを与える。自然に、笑いと関係する遺伝子があるはずだとも示唆されました。笑っているときのように、よい思い、楽しい思い、陽気な思いをしていれば、よい遺伝子がオンになり、逆にわるい思い、いやな思いにとらわれていると、わるい遺伝子がオンになってしまいます。遺伝子というと、100%生まれつきの問題のように思ってしまうのですが、どの遺伝子がオンになり、どれがオフになるのかは、おおいに環境の違いによるというのが、議論の焦点でした。

 米国における村上先生の研究のエポックは、ひとがなぜ高血圧になるのかについて、20数年前に、遺伝子レベルで解明したことでした。わたしも留学していたときの経験で想像はつくのですが、村上先生は、糖尿病の大権威の医者が、教室でどんな話をされるか、米国の陽気なジョークをいっぱい紹介されましたが、その村上先生のまた、語り口が吉本並、あるいははるかにそれ以上でした。深い話で、笑いを誘い、すごい方だと見とれていました。

 わたしも、日経新聞の領空侵犯に、健康の問題について、病気を薬でという以外の道があるという話を書く前でしたが、日頃考えていることとつなげて聞いておりました。

 専門的には、高血圧の原因物質レニンの話となるのですが、このへんは、たとえば、村上先生の『生命の暗号』(サンマーク社)などをご覧ください。パスツール研究所、ハーバード大学と競争しながらも、このサイエンスのレースで、遺伝子の解読がいちばんのりとなりました。サイエンスの世界では、二等賞にはなにもないというきびしさを教わりました。そのプロセスで、いろんな偶然や、一見科学的でないこと(思い、感性、直感、インスピレーション)に助けられ、そこから、ロジックだけを中心に動く「デイ・サイエンス」とは、異なる「ナイト・サイエンス」の存在、その貴重さを強調されました。世界中に何億人もいる高血圧のひとにお役に立つ研究に邁進してこられたのでした。25,6名の大学院生と奮闘して。時間が勝負だったそうで、研究室に寝袋も日もあり。「自分たちは世界のトップに立っているかもしれない」という思いで、皆ががんばったそうです。ここらは、サイエンスの世界のフロンティアでの営みにおけるリーダーシップの問題として、自分の専門領域の観点からも興味深い話がいっぱいありました。

 最近では、イネのDNAの解読に邁進。元々京都大学の農学部ですから、昔取った杵柄とうことですが、イネで、アメリカの研究者に先行されたらいやだ。「アメリカは、米ドル、というだけあって、イネに出てきたのか」とジョークを放ちつつ、実際には、イネは30億のひとが食べているので、世界の主食で、食糧問題は世界レベルで大切なので、米を書食にしてきた日本人のけなげな研究で、「イネだけは絶対負けない」という心意気で挑戦されているそうです。

 ところで、イネの遺伝子はだれが書いたのか。高血圧にかかわるレニンの解読をしたりすると、すごいと言われるけれど、でも、遺伝子を「読む」より、もっとすごいなにか創造の存在がある。つまり、遺伝子を「書いた」存在こそすごいということで、それへの畏敬の念を、これこそ村上先生のいちばん大事なキーワードだと思うのですが、「サムシング・グレート」という言葉でそれを表現されていました。繰り返し、何度も、講演の間、この言葉に言及されました。ゲノム。32億個の科学の文字。読むのはたいへんだけど、確かに。でも、書いたのは、もっとすごいことだ。だれが書いたのか。自然。これに対して、サムシング・グレート、なにか偉大な存在と言わざるをえない。そういう気持ちを芯から深くお持ちであった。サイエンスの最先端の先生の話がどこかで宗教につながる点がおもしろい。このあたりに興味をもたれる方は、作家で禅の僧侶である玄侑宋久さんとの対談『心の力――人間という奇跡を生きる』(致知出版)をひもとかれるのがよいでしょう。宗教家が意外にも深く科学的思考をされていて、科学者である村上さんのなかに、サムシング・グレートを中心に、宗教的とイコールでないとしても、崇高なものへの畏敬の念が表明されています。

 かのドーキンス博士は、利己的な遺伝子と言ったものですが、村上さんは、違う、と。違った細胞が見事に協力しあっているのが、生きている姿だ、と言われました。セルフィッシな遺伝子以外に、ほかの細胞を助ける利他的な遺伝子もあるはずだと、仏陀やキリストが訴えたことは、遺伝子の言葉でも語れるというお立場でした。

 大人が、「子どもをつくる」というのは傲慢な表現であって、38週間の間に、対峙は、生物の38億年の進化のドラマをくぐります。お母さんの1週間は、胎児の1億年に相当します。進化の長さからは。プログラムを読んだのは人間でも、遺伝子情報を書いたのは人間ではありません。大自然、なにかとてつもなく大きな存在、サムシング・グレート。わたしがわたしの実際にもっているDNAで、両親から生まれる。その両親に両親がいる。それがないと、細胞一個だってできない。わたしがそのように生まれるためには、連続100万回、100000000からひとつ当たるというクジを当て続けないと、できない。「ありがたい」「おかげさま」「もったいない」という言葉は英語に訳せません。日本人はずっとこの言葉を言ってきました。「おかげさまです」というとアメリカ人なら「なにのおかげですか」と問い返すかもしれません。われわれには、太陽、大地、空気、すべてありがたいことで、もったいないことです。わたしの存在もまた、確率的にも「有り難い」事象です。わたしがここに存在し、あなたがここに存在すること自体がありがたい。すべての生物の親にあたるものを、サムシング・グレートと呼ぶようになった理由のひとつをこのように説明されました。とうとうダライラマとも4回も対談されたそうです。そういう日本でも命を粗末にするようになってしまいつつある。

 そんなときには、サムシング・グレートがなにかメッセージをわれわれに送っているのかもしれません。喜びによって、感動によって、他のひとが感動するのを見て、よい遺伝子にスイッチがオンになるような生き方をしよう。エリート中のエリートでも、遺伝子レベルでは、99.9パーセント同じ。どれがオンになるかがすごく大切。人間として生きることのすごさを感じ、希望をもつこと、日本には使命があると信じること、こういうことを生命科学の最先端から説き続けたいという言葉で、講演を終えられました。

 ここでは、文字なので、語り口までうまくお伝えできないのですが、村上先生自身のひとを惹き付ける、そしていっぱい笑わせてくださる語り口はすごいもので、わたしが思いつくのは、河合隼雄先生ぐらいです。同じぐらい、腹のそこから笑わせてくれて、なおかつ奥行きの深い話をされるひとはといえば。

 途中、たくさんのエピソードが披露されました。海外でのご活躍のあと、筑波大学の教授になられたが、同大学を世界レベルのリサーチユニバーシティにするために貢献された。江崎玲於奈先生を学長に招いた功労者も村上先生だそうです。

 わたしはといえば、こういう村上先生のありがたい話を、六甲会議があるおかげさまで、直接に先生からお聞かせ井ただきたことを、もったいなくも、ありがたくも思って、大きく感動しました。

 北岡先生の話もスケールが大きく、村上先生の話もまた違う視点から、日本らしさを考え直すきっかけをくださいました。

 経営学のなかで人の問題を扱いながら、日本らしさの問題をまたいつか自分の深く考える必要が出てくるだろうと思いつつありますが、すごい日でした。この2007年4月20日は。

 ちょうど、1年前のこの六甲会議では、久々に京都大学のときの恩師、河合隼雄先生のお話を聞かせていただきました。1年前の感動を思い出しながら、深い話を軽妙の語る姿に共通ななにかを感じました。その河合先生が、村上先生を高く評価され、村上先生もまた、ユング派の集合的無意識やシンクロニシティ(共時性)は、生命科学の観点からも妥当性があるのではないかと著作のなかで示唆しておられます。もともとすごい笑いのエネルギーとすごいパワーの河合先生が元気になられることを心から祈って、話をつぎに続けたいと思っています。実は、河合先生の著作先生に寄せたわたしの言葉をブログに転載してもいいという許可を岩波書店さんからいただいていますので、次回はそれについて書きます。
posted by: 金井壽宏 | 2007.05.09 Wednesday | 00:52 |
健康コンシャスカンパニー(CHOにもうひつつの意味)
 六甲会議のつづきを書くと予想しながら、その約束を果たす前に、ほかのトピックにふれることをお許しください。

 今日の日経の朝刊に書いたことなので、今夜書くのが適切なトピックが出てきたためです。長らく、CHO(Chief Human Officer)という名のもとに、経営の根幹として人材マネジメントの問題を扱うトップの役割について、日本CHO協会、また、一橋大学の守島基博さんと、議論を重ねてきました。今日のコラムでは、CHOには、もう一個(Chief Health Officer)という側面もいるのではないというアイデアを書きました。健康の問題を、勤務する産業医の問題、またその大ボスの医務部長の問題にとどめずに、わが社で働く人びとの健康の問題は、そもそも経営の成り立ちの根幹であるという考えが、突拍子もないものでないように、わたしには思われます。

 伊藤邦夫さんが定着されてきたCBV(コーポレート・ブランド・バリュエータ)にあわせて、会社が働くひとにいいところかどうかという指標、たとえば、WPV(ワーク・プレース・バリュエータ)があったらないいなといいつつ、実現していません。よい職場の指標がむつかしいからです。ただし、健康を基軸にするなら指標がみつかるかもしれません。

 実際には、トヨタもキャノンも、長期にわたって業績のいい会社は、同時に健康コンシャス・カンパニーでもあることに気づかされます。働く人びとを疲弊させる会社が、短期的に業績をあげていても、それでは、ひとという資産をリキデートしていることになります。

 CFO、CIOは、財務部長が、かつての情報システム部長が、ただ金庫番、かつてのメインフレームの司祭という役割から、経営の根幹として、企業財務、戦略の武器としての情シをデザインする役柄となったことを示す言葉だとしたら、健康コンシャスカンパニーは、CHO(Chief Health Officer)がいてもいいのではないか。

 環境会計があるのなら、かつての人的資源会計はうまく立ち上がりませんでしたが、企業の環境レポートに負けない企業の健康レポートが会社から出されてもいいのではないでしょうか。

 ほんとうに健康コンシャス・カンパニーが長期的に伸びているというエビデンスが、環境レポートと並び健康レポートが整備されて、健康コンシャス指標と長期的業績との関係が解明されてきたら、いつか、エコファンドならぬ、ヘルスファンドの投信を目にする時代がくるかもしれません。

 そう思ってはたと気づいたのは、このCHOという略称には、ふたつの意味があることです。すでにChief Human (Resource) Officerの意味合いで使ってきていますし、わたしも日本CHO協会をサポートしています。そこで、素直に考えれば、CHOのHには、人材(ヒューマン・リソース)という意味と、その健やかさの大切さ(ヘルス)という意味の両方があると、みなす段階にきているのではないかとも思いました。研究会や研修の機会にも、この問題に気づかされることがありました。

 いろんな会社で、モチベーションやリーダーシップの議論をしているときに、つい「皆さん元気ですか」「疲れていますか」と聞くことがあります。

 正直に「疲れている」とお答えになるひとが、かなりおられます。若手の管理職の集まりで、モティベーションという意味での、やる気、意欲の議論をしていたのに、そうとう健康にかかわる話ではないかと気づかされることがあります。われわれが純粋にモティベーションの話をするときには、同じぐらいの健康状態を念頭に、そのひとがやる気という観点からより元気になってイキイキすることをテーマとしてきました。でもこういう休憩時間になると、元気のない社員、場合によっては、自分のことを語る根っこの問題が、本音レベルでは、体の、そして心の健康問題にまでいきつきそうだと思えることがよくあります。

 わたしは、医者ではありませんので、そうなると、専門的なことは議論できません。ただ、ひとつあきらかなことは、経営学や経営、組織行動論や人事部は、会社で働く人びとの問題について、もっと意識を高める必要があるのではないかということです。

 それで、専門領域外なので、むりを承知で、日本経済新聞の領空侵犯(2007年4月30日付け朝刊第5面で、そういう問題について短い紙面ですが、書かせてもらいました。

 領空侵犯とは言葉どおり、自分が専門とするのでない領域に出て行って、いいこと言え、それも専門家が気づかないような異説、さらには暴言、それでもなるほどと思えることを言えという趣旨ですので、とても難しいです。

 わたしも、このわたしの記事を読んだら、医者の友だちはあきれて、話してくれなくなるかもしれないと恐れつつ書きました。

 でも、会社のなかで、社会のなかで、いい会社なら働くひとの健康問題を会社経営、運営の根幹、基礎の基礎と公言することが生まれてきてほしいです。

 先週末に京都で、キャノンの役員で総務本部長の、したがってCHOの担い手にも近い山崎敬二郎さんと、経営理念の考える会合でごいっしょでしたが、キャノンではそもそも、創業者がお医者さんであったこともあり、健康第一主義が、理念の柱のひとつであることに、あらためて気づかされました。これまである研究会と人事の別の大会で、トヨタの宮崎人事部長にお見えいただいたときには、健康への取り組みの話しがかなり熱心に語られたことをあわせて思い出しました。

 そもそもの発端は、ヤマハの元常務でわが敬愛の和智正忠さんが、リズムを刻むことと免疫力で測定される健康の度合いにかかわりがあるという研究に、バリー・ビットマン、リズム楽器のレモ社の開発部門と研究をはじめたことでした。そこから生まれたヘルス・リズムは、なんと、米国では医療費削減のために、まず高齢者のおられるところから重点的に試されたそうです。そのヘルスリズムの日本版、さくら、をわたしも、ヤマハのお膝元の浜松と、神戸大学の教室(ヤマハの方に講義をしてもらっていた)で受けました。ほんとうに気分がリフレッシュしますが、リズムを皆で楽しむことが、ただリフレッシュするというのではなくて、生きていることの根幹にもかかわるというのは、ドラムたたき人(へただけどすきな)としては、とてもうれしいです。

 現代音楽のジョン・ケージは、無響室で音が聞こえたら、高音のホワイトノイズのようなものは、神経の情報が流れる音で、また、より低い音は、血液が流れる音だと言ったものです。血液の流れの大元は、心臓の鼓動で、それは英語ではハートビートだということに気づくの意味のあることでしょう。

 リズムを刻むことが生きていることの根幹にかかわるというのはなんとなくわたしにはぴんと来ます。生きていることはリズムで、散歩もリズムで、一日も四季もリズム。

 以下、舞台裏を示すようですが、今朝の領空侵犯の記事が成り立つまでに、わたしが考えを書きとどめたメモを、以下に貼り付けておきます。

 領空侵犯の取材を控えての金井メモ
(以下は、パソコンのHDのWordファイルからのペーストです)

領空侵犯 メモ

ポイント
.螢坤牾擺錣蓮△燭燭韻于擦出るので、だれでも入門できる。ただし奧が深い。ヘルス・リズムのような企てが、子ども向け以上に、まず高齢者に広めて、リズムで健康になって医療費が削減されれば、つぎの世代にもプラスとう高い志で実施されている点

▲悒襯好螢坤爐瞭本版のさくらを二度、経験したがほんとうに気持ちがよかった。読書をしたり、散歩をしたりでえられるよりも、リズムを楽しみほうが、健康への効果が高い(米国のバリー・ビットマン)  和智さんは、これの日本版をつくるために、大企業の常務が、常務をやめて、学生となり、2006年度にリズムが免疫力に与える効果について博士号をとられた。すごい。

F瓜に、キャノンは、元々創業者の御手洗さんが医者だからというのもあり健康コンシャスで、また、トヨタも健康にうるさい。「太ったひとがいない会社」。ぶたっているひとからは差別と言われようが、本気で、生活習慣病を少なくする努力を。生まれつきでないのだから、「体格による差別だ」とは言われないだろう。部長には、生活習慣病で異常値が二個あるとなれない。役員は、部長より年とっていて、激務だから、より厳しく、異常値が一個まででないとなれない。そういう風にして、経営層が健康の見本になっているような会社。 われわが活動している時間の多くが会社だということを考えると、健康コンシャスな会社を奨励し、また、会社で働いていないために健康診断をうけられないひとのために、施策があってしかるべき。あわせて、できれば、生活習慣病の撲滅にしても、免疫力アップにしても、楽しくできるように。おいしい薬膳、体にわるくない(それどころか、体にいい)ファーストフード。また、やっていた楽しくで健康増進になるヘルスリズムのような動きを奨励する財源。

い錣燭啓身が、へたくそだったドラムスを、もっとまじに、しかし、楽しく、健康のために。もともやりたかったというひとが多い楽器で、冒頭にいったとおり、入門はたやすい。

コ銅劼瓦箸法一方で社員の健康コンシャスのために手を打っている会社に、そういう事業開発にインセンティブを与えるのに加えて、また、アメリカのレモ社がヘルスリズムをつくったように、各社ごとに、(環境にいいことと同様に)楽しく健康増進につながる商品開発を促す。そういう提案ができれば。

 ここまでで箇条書きにしてきて、これらのポイントを整理しても、異説性が乏しい。志ある暴論をはくには、この健康というテーマが素直すぎるからかもしれない。うまく取材に値すように考えがまとまらなかったら、このコラムには役不足でおりよう。ほかにどういう論点がありえるか。

「健康を、むりしてでなく、楽しく、おいしく、すっきり実現できる社会」というものを、考えると、経営学という枠を超えてもう少し大きく考えられるか。

健康コンシャス社会。寿命が長いのがリスクだと言われる社会にはならない。
そのため、たとえば、ほんとうにいい薬膳と同様に、おいしくて体によい食の開発。便利なところで手に入るものほど、あやしいのではなく、便利な中食(おそざい)、外食だけど、体にわるくないどころかいい。
 カレーが食欲のなにところでも食べられるのはなぜか。それは、カレーのルウの素材が元々薬剤だったからだと聞く。カレー粉に入っているものと、パンシロンなんかの胃腸薬とは重複するそうだ。(ふれないが、ハウス食品の小瀬社長に聞いたこと)。
 生活習慣病と、成人病が名付けられたことは非常に意味のあることだ。歳をとればなるものだという発想を封じるから。自分が、30代、40代のときに、50代、60代の経営者が、「ぼくは異常値ゼロ」と誇らしくいうひとの意味がわからなかったが、好きな運動をして、おいしいもの食べて、ワインもたっぷり飲んで、友達が多く、そして、健康なひと。
 健康コンシャス・カントリー、健康コンシャス・カンパニー、健康コンシャス・コミュニティのシナリオを、お医者さんなど、医療従事者(が大事だが、彼ら)だけに任せない。
 食べ物から入る。楽しみから入る。走る、歩くがきらいなひとでもできること、たとえば、リズムを刻む。
 医療費の削減は、病気になってからなおすよりも病気にならないひとが多い社会。団塊世代は団塊世代で格差があるという時代に、長生きするひとたちが増えることが、子どもにとって、コミュニティにとって、病院にとってリスクだと言われないように。
 河合隼雄先生のマラソンのメタファー。43キロ走りきったあと、もう10キロどうですか。と言われたときに。どういう姿勢。個人は、会社は、社会は。
 万歩計を配る、歯ブラシを配る(三菱電機でしたか、テレビで取材されていたのは?)など。健康診断をみなが受けているのはあたり前だが、再診率が100パーセントも当たり前かもしれないが、再診に呼び出されたひとが、3ヶ月ごとにまた再診をするだけでなく、再診時のアドバイスどおりに振る舞って、異常値をなくしているか。それを、(ここがポイントだが)できれば楽しくできているか。
 ウォーキング、ジョギングができるひとはひとつ。だけど、おいしいものが食べながらそれができるというようなこと。
 バリー・ビットマンのヘルス・リズムの話と、さくらプログラム。リズムを刻むことが免疫力で測定される健康に、読者や散歩よりもいいという調査結果を聞いたとき。たとえば、ビットマンは、なにを考えたか。どこに声をかけた(ナローカストした)か。リズム楽器(レモ社)はなにを考えたか。日本で、わたしが、浜松で、神戸大学の教室で経験したこと。
 ドラムスをたたくのがとても楽しみだが、それが倍以上になった。
 苦労して健康を勝ち取るのも大事な経路だろうが、苦行でなく、楽しく、おいしく、すがすがしく健康を増進し、それが医療費を下げ、引いては、より若い世代の負担の軽減にも役立つことが、いろんな領域でできないか。
 ウォーキングは実際にすがすがしい。ドラムスをたたくのは快感そのもの。予防医学に医療費削減のために、とくに生活習慣病中心に、目をむけるなら、健康にきくことだけど苦行でなく楽しいことで、生活習慣病の改善や予防に役立つなら、そういうところに出向く、体によいことのリストをつくり、そこにバウチャーもって訪ねられるような社会。
 すべて、健康のエンハーンスメントとのつながりについて、研究、調査、アクション・リサーチがいる。美術館によくいく60代とそうでない60代の違い。
 老人ホームの立地場所と免疫力の関係など。エビデンス・ベースト・メディスンの時代になっているが、予防医学の分野でもエビデンスが豊かになると、健康増進のところに税金を意味ある形で使いやすくなるか。

 たとえば、領海侵犯をきっかけに議論して、
「健康診断、国民に義務化を」
「健康診断の受診率の低い会社には法人税アップの制裁措置を」
などのアイデア。
 しかし、けっしてファッショにはしない。また、生活習慣等が理由でない病気について、病によるディスクリミネーションなどにつながらない万全の注意。

 これに類するアイデアとして、

 健康診断の数値がいいと、その分、とくにサラリーマンでないひとも、国民健康保険の料率が変わるようにする。

 少し社内的なことだが、(先にもメモしたが)異常値が2つ以上あるひとは、部長や組合幹部にしない。病気よる差別だというひともいるかもしれないが、「生活習慣病」についてはということで。これは、さきの健康という名のもとの、自分のせいではない(つまり生活習慣ではない理由による)病気によるディスクリミネーションにならないように。


 健康にいいことで楽しいことは、楽しさの定義により、押しつけることはできないが、(たとえば、国民皆ドラマー制はいくらなんでもむりだが)政府は、リズムを刻むのが免疫力を高めるというような、リストをしっかり作成し、それに従事しているひとを、税制上、また、保険のうえで、優遇する。

 健康コンシャス・フーズを出すレストランに、立地に便宜を図ったり、ここでもレストラン主(個人の場合)の所得税、あるいは、フランチャイズでおこなうところなら法人税で、インセンティブ。

 しかし、書きながら思ったのですが、これはいろんな工夫の話をしているだけで、異説、暴論のラインにいっていません。むつかしいですね。

 わたしがヤマハの方に語りかけてきた暴論は、
「一家に一台は、ドラムセットがあり、そのおうちで、どら息子(ドラムス子)でなく、じいちゃんが、楽しく、しかも健康のために、毎日1時間はドラムで練習している姿」をどうして、本気でヤマハと実現しないのか。おまけに、そうするとアビテックス(防音設備)も売れる、となおいい。健康にいいものがビジネスになるか、そこにリソースがながれるように。

 経営者相手だと、相手が驚くような暴言に近いけれど、耳を傾けてもらうこと少しはありえそうだが、ふだんから、ついつい経営学の範囲内で考えがちで、天下国家のことにかかわりのある問題が経営学の組織行動論でもあると普段は注意しているつもりでも、大きな話が弱い。国レベル、国民レベルを意識した異説で、アクションプランにつながるものがあまり思いつかない。もっと。もっといいプランがないか。

 芦屋のマリーナにもっと魅力をつけたいという議論をしたときに、大昔だが、松岡正剛さん、ひとりが、マリーナにいくと、あらゆるセラピーのあるモールがあるというアイデアを披露され、実現しなかったが、非常に面白いと思った。ちょっとあやしいけれど、そこにいくとすべてのセラピーものがある、そういうマリーナ。ミュージックセラピーから、演劇療法、アロマ、もっとぎりぎりのところまで。

 でも、このコラムに興味をもってひきうけてもいいなと思ったのは、和智さんのヘルスリズムのことです。ほんとうはこれを記事に組み込まれたら、もっとうれしかった。わたしがほんとうに興味があるのは、健康コンシャスというのを、音楽を通じて考えたいということだ。振り返ると。それでは日経の取材にはならないけれど。
 いつか音楽と健康について、いい暴論、異説を考えてみたい。実践につながる方向で。そういう時期が遠くないかもしれない。

 候補にあげてくださったのはうれしいが、領空侵犯のコラムは、そうとう力のあるひとでないと書けないのではないか。

 健康コンシャスで異説のアクションプランを考えるのとあわせて、ほかのテーマを考えてみて、いいものがでなかったら、だれかほかの先輩格に、バトンしたほうがいいのかもしれない。

 記事にできるかどうかは、ともなく、こういう風に考えたことがあまりないので、今後のことを考えると、取材のためのやりとりで、日経編集部の館さん、記者の中村さんとのやりとり、そのなかであげられた例などすべてが、いいレッスンになった。
<ここまで、取材のためのメモからの引用>


 こうやってほとんどあきらめかけたときもあったのですが、朝刊の記事となりました。
以上、裏舞台ストーリー付きでした。おやすみなさい。
posted by: 金井壽宏 | 2007.04.30 Monday | 22:00 |
六甲会議の北岡伸一先生に「日本らしさ」を学ぶ
 日本IBMさんの社会貢献活動の一環として、天城会議、富士会議などと並んで、六甲会議というのがあります。何度もお誘いいただきながら、なかなか出られなかったところ、昨年出席させていただき、非常に学ぶことの大きい会合でした。
 今年もまた、4月20日と21日に神戸のポートピアホテルで開かれました。ふだんは、いつもある範囲内で思考してしまっているので、超一級の方々の考えにふれながら、もっとスケールの大きな発想が必要だと痛感させられる機会となりました。今年のゲスト・スピーカーは、東京大学法学政治学研究科教授の北岡伸一先生と、筑波大学名誉教授の村上和雄先生でした。テーマは、「あらためて日本らしさを考える」というテーマでした。
 
 北岡先生は、政治外交史の研究者でありつつ、実際に日本政府国連代表部次席代表をご経験されているので、外交の場での日本のアイデンティティについて迫力のある話で恐れ入りました。交渉の場面での具体的な「日本らしさ」のいい点、まずい点をたくさん聞かせていただきましたが、まとめのポイントのところだけクローズアップしますと、つぎのようなことでした。

・細かいことをきちんとやるのは上手。ヒューマン・セキュリティというような分野では、他の国ではできないようなシームレスできめ細かいサポートができている。

・大国の自分たちの立場を前面に出した直接的なやり方(しばしば、国のエゴが正面切って姿を現すようなやり方)に比べると、はるかに全体のことを考えた、利他的とも言える側面がある間接的なやり方で、上記の点で述べたような分野、たとえば、人権、人道というような目的で貢献している。

・過去、この国自身が国際社会に入っていくのにとても苦労したので、しかもそのことを覚えているがゆえに、途上国で苦労しているところとシェアできるものがある。

・間接的かつ決めるのが遅かったりまどろこしいことはあっても、言ったことは守るので信頼されている。

 これらが国連での外交の場で体感された日本のよい点だが(これは、舞台を変えて、産業社会で日本の経営のよさで指摘されるものと似ている点が経営学者としては興味深い)、問題がもちろんないわけではありません。それらについての北岡先生のご指摘はつぎのとおりでした。

・丁寧さは完璧主義でもあり、手続が煩わしく、大きなことを目指すときに、あるいは、予算的には小さくでもいいことができるはずのことを実施するときにも、面倒な障害となり、これは弊害だ。

・いいことをやっているのに、言うべきことをアピールして、大きな支持を得るのがうまくない。

 これらを踏まえた提案としては、ときには、「大胆にチャレンジしていくことも大事」ということでした。

 もうおひとりの話題提供者であった村上先生がライフサイエンスの最前線から唱えられた「日本らしさ」をむぐるご提案も非常に感銘をそそるものでしたが、それについては、またブログに書いてみたいと思っています。
posted by: 金井壽宏 | 2007.04.24 Tuesday | 10:26 |
MCCでの幻の研究会
 前回といっても、昨日ですが、MCC(丸の内シティキャンパス)で、今は幻の興味深い研究会(キャリア・アーキテクチャーという名の下に)をやっていたという話をしました。そのまま、報告書か書籍にしていたらよかったなぁと今でも思いますが、同時に、そういうものはないけれども、コーディネータとしてメンバーと事務局の皆さんとともに、つぎの全セッションを1年で駆けめぐったのでした。(ここからあとの記述は、前回言及した、城取さんが、ここにあげてもいいという形で、作成してくださったものです。ご配慮に感謝です)。
 キャリアについて興味のあるひとなら、この顔ぶれは、望みがたいほどのものだとご同意いただけるのではないでしょうか。もちろん、回数が限られていますので、このキャリアアー期テクシャー論のなかでも、来ていただけなかったひとはいます。
 将来、また、こういう機会の別バージョンをやりたいものです。そうでないと、これがただの回顧録に終わってしまいますから。


丸の内シティキャンパスMCCプログラム
『自律型人材を育てる「キャリアアーキテクチャー論」』
〜「キャリア持論」の協創をめざして〜
2002年5月16日〜10月31日に開催

コーディネイター:金井壽宏(神戸大学大学院経営学研究科教授)

■プログラムの概要■
本プログラムは「キャリア」について、この方法しかないといった「正解探し」
をするのではなく、参加者が自社の状況(業界特性、組織構造等)に合わせ、
地に足のついた、それでいて独りよがりではない“キャリアアーキテクチャー”を
確立するための「適切な視点探し」を行うことを重視します。
そのために、「キャリア」に関わる、さまざまな領域からの問題提起や洞察を
受け、多角的な吟味と議論を行います。

■講師とスケジュール■

◆コーディネイター:金井壽宏(神戸大学大学院経営学研究科教授)

第1回(5/16木):オリエンテーション
「キャリア論を巡る現状と課題」  
金井壽宏(神戸大学大学院経営学研究科教授)

第2回(5/30木):キャリアと組織構造/組織行動
「組織と人事システムの中の自律的キャリア」
高橋俊介(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)

第3回(6/6木):教育とキャリアを貫く日本型トーナメントモデル
「選抜型昇進の功罪」  
竹内洋(京都大学大学院教育学研究科教授)

第4回(6/13木):キャリアと人材流動化
「人材の市場価値」  
大久保幸夫(ワークス研究所所長)

第5回(6/29土)労働経済学からみたキャリア
「個人と仕事・組織の新たな関係」  
清家篤 (慶應義塾大学商学部教授)

第6回(7/11木):キャリア発達の支援機能
「メンター・コーチの役割と能力」  
榎本英剛(CTIジャパン代表)

第7回(7/25木):キャリア発達の支援機能
「キャリアカウンセリングの今後」  
渡辺三枝子(筑波大学心理系教授)

第8回(9/5木): キャリアと自己理解
「キャリアアセスメントのための心理テストの使い方」
渡辺直登(慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授)

第9回(9/26木):HRMにおけるキャリア
「戦略的人的資源管理システムの中のキャリア」  
守島基博(一橋大学大学院商学研究科教授)

第10回( / 木):キャリア論の新たな潮流
「慶應SFC キャリア・リソース・ラボラトリーの取り組み」
慶應義塾大学SFC研究所VSIプロジェクト キャリア・リソース・ラボラトリー

第11回( / 木):キャリア論の新たな潮流供楮親会
「キャリアをめぐる新しいパラダイム」  
花田光世(慶應義塾大学総合政策学部教授)
 
posted by: 金井壽宏 | 2007.04.19 Thursday | 19:33 |
お詫びと予告
経営学をやっていますと、実践的で応用の大事な学問分野ですので、いろんな研究会や研修の場、様々な使命をもったワークショップなどの場で、いろんな方々とお会いします。それは、たいへんにうれしいことで、経営学のなかで生きていてよかったと思います。ここ数年でいちばん印象深かった集まりは、キャリア・アーキテクチャーという慶応学術事業会の企画によりMCC(丸の内シティ・キャンパス)でおこなわれた連続の研究会でした。日本でキャリアの研究といえば、名のあがるひとのほとんどに来ていただき、また受講生の方々がみな、ものすごく印象深いひとでした。その結果、議論がはずみました。キャリアについて真剣に興味をもたれるひとは違うと、メンバーとともにいるたびに感じました。このキャリア・アーキテクチャーというすばらしいプログラムをわたしといっしょにデザインしてくれた、しかも(わたしが企画段階では、主というより従だったので)そのチーフ・デザイナーであった城取一成さん(株式会社慶應学術事業会 学術事業部 部長)が、このブログを訪ねてくださったようで、メールをくれました。その際に、KIMPSというウェブサイトのブログなのですが、KIMPSのウェブページには飛ばないのですね、というご指摘を受けました。そうなのです。もうしわけありません。4月はじめには開設するつもりで作業を仲間とご専門の方にお願いしてきましたが、神戸大学の職場でのサーバーに不調があり(わたしは技術的なこと詳しくてなくて、どう不調なのか、これ以上書けずにすみません)、開設準備は進んでいるのに、開設はまだです。
 そのことをお詫び申し上げますとともに、開設されましたら、まず、このKIMPSというウェブサイトをつくろうとした意味合いを、そのアイデアの源泉だった職場の大切な同僚、高橋 潔さんとの連続4,5回の対談をすぐに順次アップしていきますので、しばらくお待ちください。
なお、わたしは、一人一人の働くひとが、とりわけ経営幹部としてすぐれたリーダーシップをとれるようになったひとや、また、とてつもないイノベーションを達成したひとが、どのような「ひと皮むけた経験」を通じて、つまり経験も学校としつつ、そこまで育ったのかという、大人になってからの発達(生涯発達、成人発達)に興味をもっていますが、城取さんは、このキャリア・アーキテクチャーを企画し実施したこと、それが長く続くコミュニティになったことを、ひと皮むけた経験のひとつに将来もあげることになるだろうと言われました。(この幻の研究会から、書籍や報告書の形の成果物が出ていないのは残念ですが、わたしも含め、参加者のなかにずっと生きるようなものでした)。
もしも、城取さんが、これならブログに載せてもいいという、当時のプログラムの概要など、ご用意くださったら、短ければ、このブログに、長ければ、KIPMSのサイトが立ち上がったときに、PDFかなにかでご覧いただけるような形にしたいと思います。

お詫びと予告でした。
posted by: 金井壽宏 | 2007.04.18 Wednesday | 17:55 |