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posted by: - | 2009.08.06 Thursday | |
ビジネスインサイト特集記事
BI59
現代経営学研究所+神戸大学大学院経営学研究科の雑誌「ビジネスインサイト」No59誌上で、スポーツ選手のキャリア・トランジションに関する特集を組みました。その巻頭で、「Jリーガーがピッチを去るということ」というタイトルの記事を執筆しました。この記事では、神戸大学にてこれまで実施してきた13名の元Jリーガーに対するインタビューを編集し、プロサッカー選手が現役を引退し、次のキャリアに歩みだしていくまでの過程を、その心理面に焦点をあてながら書かれています。エリザベス・キューブラー・ロスが、末期患者の聞き取り調査から理論化した「死に向かう精神過程」についてのモデルをベースにしながら、まるで、死に至るのと同じような精神状態を経て、Jリーガーが引退を向かえる姿が描写されています。とくに、戦力外通告を受けたときの衝撃はすさまじく、それがあまりに辛い経験であるため、その時の場面をよく覚えておらず、逆に言えば、無意識に記憶から消し去ることによって自我を防衛することもあるほどでした。しかし引退が、死と同じように受け留めがたい、辛い経験であっても、極度に悲観的にならず、楽観的考えをもって、次のキャリアに進んでいけるところが、Jリーガーに代表されるトップアスリートの特徴なのです。うれしいことに、Jリーグ事務局重野弘三郎氏からは、「ここまで内容の濃いキャリア・トランジションを取り上げたレヴューはないのでは、と感じました」と感想をいただいています。

この記事に続いて、2007年6月17日に、田中ウルヴェ京氏(ソウル五輪シンクロ銅メダリスト)、西野努氏(元浦和レッズ)、林敏之氏(元ラグビー日本代表)の3名のトップアスリートをお迎えして、金井壽宏先生とともに開催した「トップアスリートのキャリア・トランジション」に関するシンポジウムの詳録も掲載されています。キャリアをキーワードに、スポーツと経営が接点をもつことのできたシンポジウムでした。

ビジネスインサイトNo59についてのお問合せは、現代経営学研究所(www.riam.jp:電話06−6201−8668:メールbi@riam.jp)までお願いします。
posted by: 高橋潔 | 2007.10.31 Wednesday | 04:36 |
イギリス・レポート(その5)
JLR
 最後に訪れたのが、ジャガー・ランドローバーの工場でした。クランフィールドから4時間以上をかけて、リバプールまでバスで移動しての工場見学です。ジャガーとローバーのラインが共同で設置されている工場であり、2ブランド・2車種について、世界各国から受注した製品を製造していました。わが国の自動車会社と比べれば、単一機能のロボットの数が多く、ロボットだらけの印象があります。また、広い敷地のためか、JITを用いているとはいえ、多くの部品を積み上げている印象でした。生産のスピードは遅く、われわれが訪れた際には昼休みと重なったのか、人がいても熱心に働く姿はありませんでした。また、チームワークと呼べるような共同作業は見えず、自分の担当の組み立てを、ときたま仲間とおしゃべりをしながら、単独で行っているような印象でした。トヨタの工場では、製造に取り掛かってから完成まで1日でこなすのに対し、ここでは、完成まで4日間が必要だということ。ジャガーやランドローバーの価格が高い理由の一端が見えたような気がしました。時間と人力をかけることによって、品質を維持していることがわかります。ただし、この工場の組み立てラインでは、作業員に長期の訓練も必要ではないようなので、工場の移転は容易に行えるだろうし、広い土地が確保できる中国には、この工場の仕組みをそっくりそのまま移行できると感じました。
 興味深かったのは、工場の従業員が乗っている乗用車に、ジャガーとランドローバーを見かけることがほとんどなく、また、親会社のフォード車も少ないことでした。ジャガーとランドローバーが高級車のため、従業員には手が出ないのではないかという話でしたが、自社ブランドの車に乗れないのでは、愛社精神などは生まれようもないでしょう。企業価値の浸透のあり方にも、わが国の自動車産業とは大きな違いがあるようです。リバプールからロンドンへの帰りのバス移動は、途中でバスの故障交換もあり、8時間以上というたいへん時間がかかるものでした。クランフィールド→リバプール→ロンドンを1日で移動する強行軍で、合計12時間以上のバス移動を耐えて工場見学をしていながら、英国の工場には驚くような技術やノウハウはなく、学ぶべきことはあまりないという感想をもちました。
 この企業視察の結論として、ARMのような優良企業がある一方で、国際競争力の乏しい企業が多く見られました。日本企業の競争優位をあらためて認識し直すイギリスでの視察でした。
posted by: 高橋潔 | 2007.10.02 Tuesday | 22:04 |
イギリス・レポート(その4)
 クランフィールド大学での講義をはさんで、次に訪れたのは、半導体や集積回路の設計とフランチャイズで大きな利益をあげているARMでした。インテルやノキアをはじめ、優良企業ばかりを顧客としており、大規模の生産拠点を持たず、設計とフランチャイズ化で高い利益を上げている企業です。プレゼンテーションの中では、企業の歴史、事業内容、人事の特徴についてお話を受けました。成果主義に基づいて個人成果を反映する高い報酬と長期休暇など、報酬面だけをみても十分魅力がある会社ですが、それだけでなく、「Hard work and fun」の合言葉に見られるように、仕事を通じての楽しさと働きがいを感じさせてくれる、働きやすい職場を実感できました。モラル・サーベイの結果でも、92パーセントの従業員が職場に満足を感じているなど、「good place to work」を絵に描いたような企業のようでした。また、グローバル展開をしている企業だけに、内部にダイバーシティが保たれており、設計部門だけを見ても、英国、アメリカ、フランス、インドなどの拠点があり、多くの従業員が国際的な転勤に応じるなど、国際色の豊かな企業でした。ARM
 日系企業では、富士通サービス社を訪れました。英国の郵便局のコンピュータ化・合理化に関連するお話を聞くはずでしたが、プレゼンテーションの中身が見当違いでしたので、結局、業種の中身はほとんどわからずじまい。また、日系のはずでありながら、日本人がまったく赴任していない、少々風変わりな企業でした。プレゼンテーションのために通された会議室の周りのオフィスは、まったく人気がなく、半ば倉庫と化していて、会社のアラがすぐにわかってしまうような場所に、よくも案内できるものだと、逆に感心した次第です。英国に進出した日系企業が、一度現地化した後には、事業をうまく展開していくことはきわめて難しいことが実感できました。Fujitsu
posted by: 高橋潔 | 2007.10.02 Tuesday | 22:02 |
イギリス・レポート(その3)
BA
 BATに続いて、われわれは、ヒースロー空港近くの、ブリティシュ・エアウェイズ管制センターを訪れました。集中危機管理室の内部を見学し、万一、事故が発生した場合に、各部署の担当責任者が一同に介し、情報の収集を行い、対応を即座に決定する仕方について説明を受けました。緊急時には6万件もの電話問合せが発生するために、事故被害者の親族への連絡と、一般の顧客からの問合せを識別し、緊急性・重要度の高い相手に適切に対応するための電話センターも、見学させてもらいしました。この集中危機管理室を見る限りでは、ブリティシュ・エアウェイズの危機対応は、きわめて高い水準にあることが実感できます。
 2012年のロンドン・オリンピックを控え、そのオフィシャル・エアラインとして、今から十分な危機管理能力を維持していこうとする態度が見えます。ただし、他の多くの航空会社と同じように、ブリティッシュ・エアウェイズの顧客満足度も高いとはいえないようです。フライトの予約、定時運航、機内サービス、荷物管理などの面で、航空会社は一般に、多くの不満をもたれるものですが、ブリティッシュ・エアウェイズについてもコメントをよく耳にします。非常時の危機管理に関する十全な対応措置と比べて、日常のオペレーション上の顧客対応との間に、いささか乖離があることが気になるところです。
posted by: 高橋潔 | 2007.10.02 Tuesday | 22:00 |
イギリス・レポート(その2)
 次に訪問したのが、DLR(ドックランド・ライト・レイルウェイ)の機関車整備工場でした。DLRは、シティのあるバンク駅から東に向けて、無人電車を運行している会社です。わが国にも新交通システムとして、ゆりかもめや神戸ポートライナーなど、無人電車は多数運行されています。また、リニアモーターを使った新しいシステム(リニモ)が運行しているわが国と比べると、無人とはいえ、電気機関による交通システムの保守管理であり、とくに驚きはありませんでした。DLR
 その次の訪問先はBAT(ブリティシュ・アメリカン・タバコ)でした。たばこ会社というのは、基本的に紙巻たばこしか生産しないため、極細の紙巻たばこのような新製品もあるものの、あまり技術革新が起こらない産業のようです。P&Gから派遣されたMBA学生に、「うちは500種類以上の製品バリエーションがあるけれど、お前のところは、たばこだけしか作っていないじゃないか」とコメントされたことが印象的だったと、プレゼンテーションの中で話題にしていたくらいですから。BATでのプレゼンテーションで強調点は、世界規模での原料生産ならびに世界規模での販売に関する点と、パッケージ・ボックスの革新に置かれていました。とくに、パッケージについては、化粧コンパクトのような形をしたものや、2つに割れて中に宣伝が印刷できるものなどが紹介されました。エンジニアが何ヶ月もかかって、厚紙の革新的な折り方を開発し、工夫を凝らしたパッケージ・ボックスを生産している様子は、エンジニアというよりデザイナーの仕事のようで、なんとも印象深いものでした。
たばこ会社というのは、現代では、そこに就業すること自体が、従業員にモラル・ジレンマを感じさせるようで、それを補うためか、社員食堂がきわめて豪華にできていました。繁華街のレストランにも劣らないクオリティのランチが無償で得られ、ワインを購買することもできる社員食堂には、さすがに驚きました。また、社内には美術品が多く飾られており、そこにもたばこ会社の経済的豊かさが見て取れました。BAT
posted by: 高橋潔 | 2007.10.02 Tuesday | 21:55 |
イギリス・レポート(その1)
神戸大学・クランフィールド大学共同プログラムに参加して、英国の企業を訪問しました。英国にはめぼしい産業があまりなく、すぐに思い当たるような英国企業がないなかで、わざわざイギリスに来たからには、企業の実態を見聞きできる貴重な機会だと感じて、プログラムに参加してみたのでした。その結果として、全体としてみれば、英国企業に力強さを感じることが、やはりできませんでした。訪問した先がさえなかったのかもしれませんが、英国企業に競争力があまりないこと、それを理解できたことが大きな収穫だったかもしれません。イギリスからのレポートです。cranfield
 まず最初に訪問したのは、HSBC(香港上海銀行)です。金融の中心街シティを離れ、2012年のオリンピック会場予定地にほど近いロンドン周辺域に、現在、市政府の指導のもとで、多くの金融機関が本社を移転させています。シティが、建立後2世紀以上を経た石造りの建物が多く立ち並び、古風な印象が漂っているのとは打って変わって、ガラス張りの近代的なビルが建つテムズ河下流のエリアに、ヨーロッパの金融センターが移るという大プロジェクトは、多くの努力と調整が必要です。このような大プロジェクトを推進できるロンドンの都市計画の先見性と、英国の金融業の力強さを知らされました。
 HSBCのプレゼンテーションでは、産業としてはすでに古く、だれもが見向きもしなくなった鉄道業(旅客・貨物)について、既存の鉄道会社を買収し、多くの企業・投資家から資金を集め、旅客・貨物列車の運行と維持管理、安全確保などを行っていく事業について、お話をいただきました。わが国であれば、銀行がおこなうような事業ではないので、銀行員が鉄道の保線係や運転士と密な連携を取るというようなことは、あまり考えられないでしょう。その業務の多様性に、英国の金融機関の特徴を見るとともに、英国の金融機関が、いわゆる商社機能を持ち合わせていることに驚きを覚えました。鉄道という古い産業を、十分リターンのある投資対象にする点は、とくに興味深いものでした。HSBC
posted by: 高橋潔 | 2007.10.02 Tuesday | 21:51 |