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posted by: - | 2009.08.06 Thursday | |
2.問題意識:なぜいま自律的なキャリア開発が喧伝されているのか
いま,産業界が望ましいと考える人材像は,「自律的にキャリア開発をしていく人材」である。とくに慶應大学の高橋俊介先生の『キャリア・ショック』(1)の発刊以降,みな同じことを言うが,なぜいま巷で自律的キャリアが盛んに喧伝されるようになったのか。一つの説明の仕方は,人事管理の方針が雇用保障からエンプロイアビリティ(employability)の重視へと変化する中で,「会社は社員に能力開発の機会を与えるが,それをものにするかどうかは個人の責任である」とする新しい社会的契約関係が成立したからだ,というものである。果たして本当にそのような理由から自律的キャリアが唱えられるようになったのか。私はむしろ異なる説明の仕方があると思う。すなわち経営戦略や人事管理の変化がキャリア自律を要請しているのではないか。

経営戦略の変化は,グループ経営の強化によって本社人事部の役割の変化が起こり,ピープルマネジメントの主体が人事部からラインマネジャーに移行しつつあるということである。人事管理の変化は,成果主義のテーマのもとに職能資格制度から職務等級制度へ転換しつつあることである。これも同様に,ピープルマネジメントの主体を人事部からマネジャーに移行させる圧力となる。それにともなって,後で詳しく述べるが,本社人事部とラインの間の人事情報の非対称性が拡大する。

本日お話しすること

つまり事業会社への権限委譲や成果主義人事への移行は,必然的に人事権を本社人事部からラインへ委譲する。それにともなって人事情報の非対称性と粘着性が高まり,その対応として個人にキャリア自律を要請されるようになる,という考え方である。これが本日お話しするテーマである。(平野光俊)

(1) 高橋俊介 2000 『キャリア・ショック』 東洋経済新報社
posted by: NOMA第3期人材マネジメント研究会 第5回定例会報告 | 2007.08.11 Saturday | 05:03 |