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posted by: - | 2009.08.06 Thursday | |
働くのによい場について信頼できるランキングがこの国にもあれば
働くのによい場について信頼できるランキングがこの国にもあれば、いったいどう思われますか。

ほんとうに役に立つ情報は評価情報だとよく言われます。たとえば、新しい土地に引っ越した家族に役立つ情報は、ただ単に、どこに医院があるか、どこに美容院があるか、という無職透明な情報ではありません。どこの医者が感じ悪いきびしい医者だがいい医者で、どこの医院はとてもきれいけれど、そこの医者はヤブだとか、そういうことを聞きたいです。同様に、美容院についても、たとえば、「小さい子を連れて行って、子どもがちょろちょろしてもだいじょうぶな美容院といえばあそこがイチオシだ」みたいな情報を、知りたいはずです。それが役立つ情報です。

昔から、消費者としてわたしたちがときどきは買いたいものがテーマになっている雑誌を手にするときも、知りたいのは、結局、どこの会社がどういう冷蔵庫をつくっているかではなくて、ずばりどこの冷蔵庫がいいのか。いい順からランキングしたら、上位10機種はどうなるかを知りたいのではないでしょうか。だから、たとえば、『特選街』みたいな雑誌でも、勇気を持ってそういう評価情報を載せます。「勇気を持って」といった理由は、たとえ上位10位に入っていたとしても、8位の会社は、「なぜうちが3位に入っているライバル他者より、ランキングが下なのか」と当然のように、おしかりを受けるからです。評価の対象となった商品をつくっている多数の会社から、問い合わせ、場合によってはクレームがくるでしょう。それを見越しても出しているのだから、勇気がいります。空勇気(空元気)でないためには、クレームにもめげないぐらい、いい調査に基づいて評価がなされている必要があります。美人コンテストではないのですから。

覚悟のうえで評価情報を載せるのが肝心だと言い直してもいいでしょう。覚悟が空回りしないためには、どのような基準に基づいて、実際にだれにどのような調査を行って、できあがったランキングかを、胸を張って説明できることが大事です。

アメリカ人は、(ちょっと軽薄なようにも見えますが)楽しむ気持ちでなんでもランキングしたがります。病院のランキング、クリエーティブ・クラスが住みやすい都市のランキング、MBAのランキングなど。ボストンにいれば、マサチューセッツ・ゼネラル・ホスピタルが上位に入り、クリーティブなひとの魅了度でも街としてもボストンそのものが二位に入ってきたり、また地元のハーバード大学やMITのMBAが上位に入ると喜びます。でも、それでも、(わたしも3年過ごした)MITのひとたちは、いつもMITのランキングがハーバードほど高くないのをぼやきます。どういう調査なのか、と言いつつ。たとえば、だれに聞いたうえでのランキングなのか、まっとうな質問もあれば、単なるクレームも出てきます。質問としては、「だれに聞いたのか」というサンプリングの問は、意味のある問です。もしCEOにどこのMBAがいいのか聞けば、当然、毎年の卒業生の人数がダントツに多く、ペンシルバニア大学に継ぐ老舗で、しかも、卒業生の累積総数が多いのも反映して(また、入学時の選抜と教育のよさももちろん反映して)実際にハーバードMBAでCEOになっているひとが多ければ、ハーバードがCEOを評定者としたランキングでは上位に来て当然でしょう。また、採用担当に質問してランキングをすると、MITのMBAは、「賢くてなまいきだから」と思われれば、いっそうランキングが低く出るかもしれません。評価情報であるからには、評価がひずんだものであってほしくないという思いは、正当です。わたしはわたしなりに、勤務校の神戸大学がMBAのランキングにあがると、やっぱり気になるものです。

さて、違う領域ではどういうものをみたいですか。評価情報として。

はじめてジョブマーケットに出る学生さんにとって、ある会社で数年がんばってきたけれど、働く場としてイマイチなので他の会社への転職を考えている若手にとって、どういう情報が有益でしょうか。会社についても無味乾燥な情報ではなく、ずばり、働くところとしていいのかどうか知りたいでしょう。そんな風に考えているひとがこの国にもおられて、わたしの研究室に、ある時期ある新聞社のひとが足繁く4、5度こられました。ワークプレース・バリュエーター(働くところとしての評価尺度――算定式とスコア、それに基づくランキングを含めて)をつくりたいという用向きで。わたしが関与する形では立ち上がっていませんが、興味があります。難しい課題はあるでしょうが、そういう動きに関心はあります。

これとは種類が違うのですが、プリズムのような優良企業のランキングや、一橋大学の伊藤邦夫さんが日経新聞とつくったコーポレート・バリュエータみたいなランキングもすでにあります。伊藤さんは、自分にとってこれをつくったことは、わが「プロジェクトX」というほど、熱い想いによるのだと、よくおっしゃいます。

だから、組織行動論を専攻して、人材マネジメント、それからキャリア発達、学生の就職活動にも興味をもつわたしにとっては、ワークプレース・バリュエーターみたいなものへの希求がいつもどこかにあるわけです。

そして、皆さん方も、日経ビジネスなどにたまに紹介されたりします(2007年2月19日号)ので、米国には、GPTW(Good Place to Work)というプロジェクトがあり、それの担い手として、Great Place to Work Instituteという機関(GPTWI)があり、ランキングがこんな「ワークプレース、プレース・トゥー・ワーク」という分野でも存在することを耳にした方がおられることでしょう。

この問題に詳しい斎藤智文さんによれば、GPTWでは、「働くのによいところ」を、「従業員が勤務している会社や経営者・管理者を信頼し,自分の仕事や商品・サービスに誇りを持ち,一緒に働いている仲間と連帯感を持てる会社」と定義し、1998年より毎年一回、1月号の『フォーチュン』誌に、働く場として最もよい会社、上位100社をランキングしている。その調査に対して、昨年では500社のエントリーがあったそうです(http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20070608/274140/)。この数字は多いのか、少ないのか意見がわかれるでしょう。わたしは、導入してから10年近くも経過していること、『フォーチュン』誌という雑誌の可視性が高いこと、経営者もこれから就職・転職するひとも大いに関心をもつ情報であることを鑑みると、まだ500社というのは、少ないと思います。だから、期待は大きいがもっと信頼できる評価法が継続して求められているのかもしれません。納得がいくものができれば、実際に働くところとしていい会社だと自負している会社がどんどんエントリーしてくるでしょう。

 経営者や人事担当、とりわけ採用担当は、こういうランキングがあれば、すごく気になるはずです――ランキングが低くても高くても。今ある就職活動に関するランキングは、学生からの人気を見ているだけですので、それとはひと味違うGPTWみたいなものがこの国でもできれば、個人の側にとってもニーズは高いでしょう。

人びとがイキイキしているのかどうは、ひとりひとりの個人の問題でもあるが、そういうひとが大勢いる会社と、概してイキイキしているひとが少ない会社があるとしたら、そういうランキングはみたいと思う学生も、また転職を考えるひともいるはずです。測定は、公表データではわからない部分があって、調査の必要があります。だから、ランキングに耐える調査に現時点のGPTWがなっているのかどうかが当然、日本でもそういうランキングができ始めたら、おおいに話題となるでしょう。各社ごとにどのようなサンプルをどのように選び、そのひとたちからどのようにデータ収集し、いかなる回収状況で、そして、肝心なことだが、ランキングのためにどのような算定式が用いられたのか、それは適切なのか、ということが議論になるだろうし、そのための素材がある程度、オープンにされる必要が将来出てくるでしょう(今は、まだ日本版GPTWは実験段階というところなのでしょうか)。

 米国の取り組みがどの程度信頼できるものであるのか知るためには、GPTWIという機関を訪ねるべきでしょう。

働くのによい場について信頼できるランキングがこの国にもあれば、どうなることでしょうか。ちょっと考えてみてください。

posted by: 金井壽宏 | 2007.06.11 Monday | 15:36 |
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posted by: - | 2009.08.06 Thursday | 15:36 |