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posted by: - | 2009.08.06 Thursday | |
4.人事管理の変化
次に,グループ経営戦略に適合的な人事制度を,どのようにして設計するのかをお話したい。みなさん方の間では成果主義が流行り言葉となっているが,なぜそうなったのだろうか。

日経新聞に成果主義という言葉がはじめて登場したのは1992年。2000年には113件と急増した。バブル崩壊以降のデフレ不況下で,日本型HRMに対する閉塞感が蔓延した。その内実は人件費のコスト構造を柔軟につくりかえられないということである。生産基地としての中国などアジア諸国の台頭によって,日本企業のコスト優位性がなくなったのにも関わらず人件費が高止まりしていることへの苛立ちであった。コスト構造を変化させるための制度が成果主義だった。

成果主義を強めたほとんどの企業は,対外的にも内向きにも,コスト削減としての成果主義の意義を強調しない。賃金を下げたいという目的が第一義であると社員の納得が得られないからだ。また本質的にも,コスト削減を目的にしても成果主義はうまく機能しないだろう。成果主義は戦略からブレークダウンされる役割から創出されるアウトプット(成果)の市場価値を,組織内部の人材価値に接合させていくことに,本質的な意義がある。しやがって成果主義は戦略との関係からもっと広い文脈でとらえていく必要がある。そこで,SHRM(Strategic Human Resource Management)という考え方を紹介したい。

戦略的人的資源管理(SHRM)

SHRMにはa,b,cの3つのタイプがある
‥合モデル
a.垂直的適合:経営戦略とHRMの一貫性を追求。
b.水平的適合:HRM施策間の一貫性とシナジーを追求。
▲灰潺奪肇瓮鵐肇皀妊
c. HRM施策のベストプラクティスの編成により,社員のコミットメントを引き出す。

上位の戦略によって人事戦略を適合的に設計すると考えたのはマイルズ=スノウ であるが,彼らが考えた「適合」(fit)とは人事管理のあり方は企業戦略によって規定されるというものだ。そこでは,企業戦略が3つに分類されており,それぞれに適合的なHRM戦略が採用されるという。すなわち,プロスペクター戦略 の場合は購買型HRMであり,防衛戦略の場合は育成型HRMが適合的であるという 。ここで成果主義人事の本質をSHRMの視点からまとめると次の4点を達成することが課題となる。

.轡好謄爐料軋里箸靴討HRMを経営戦略と整合させること。
⊆勸全体を対象にコミットメントを引き出すこと。
HRMのベストプラクティスを学習し編成すること。
じ帖垢凌融システム間の整合をとりシナジーを発揮すること。



社員格付け制度の改革

上記を達成は,人事制度のサブシステムでなく,本丸である基本システムを変えなくてはおぼつかない。それが社員格付け制度改革である。これはパソコンのOSにあたり,ここを変えると全てのシステムを整合的に変える必要がある。近年は多くの企業が実際にこの格付け制度の変更に着手している。

社員格付け制度には,人を基準にした年功資格制度や職能資格制度と,仕事が基準の職階制度と職務等級制度とがある。今回の参加企業においても,職能資格制度を導入している会社は2社しかなく,職務等級制度の会社のほうが多い。つまり多くの日本企業はかつての職能資格制度を職務等級制度に変えつつある。



職能資格制度では,人事部に情報が集約化され,全体的なインターナルバランス(甘辛具合)を基に格付けを決定し,人事部が公平性や秩序の維持に貢献する。
職務等級制度では,あらかじめ全社的に決められた職務価値基準にそって事業部門のマネジャーが格付けを行う。これは思想の転換であり,本社から現場のマネジャーに職務価値を格付けする権限が移行する。

職務等級制度を採用している外資系メーカーA社や最近職能資格制度から職務等級制度に改革したB社の事例からも分かるように,人事部の役割が変わっていく。



(平野光俊)
posted by: NOMA第3期人材マネジメント研究会 第5回定例会報告 | 2008.06.04 Wednesday | 10:48 |
3.グループ経営の変化
経営戦略でいまもっとも大きな課題はグループ経営である。グループ経営とは,基本的には事業ドメインを再編成して,カンパニー化したり分社化したりするということである。たとえば,三菱電機はDRAM事業をまるごと日立・NEC連合に委譲した。また,松下電器はドメインを14個に再編して,ドメインに応じて事業部や子会社を再編するということを行っている。

分社化を伴うグループ経営改革の目的は,以下の4つである。
.薀ぅ丱覺覿箸量亙錣鯔犬欧觀弍鳥餮擦鯀禄个垢襦
競争力のあるコスト構造に転換する。
A反コ萠呂魄飮する最適規模を実現する。
せ業ポートフォリオに応じた傘下事業会社のジョイントやエキジットの自由度を高める。

グループ経営に影響を与えた法制面の変化は次の3点である。
_饉卻割法
事業部をスピンアウトして一つの会社に分社することが,税制面でやりやすくなった。
∀結納税制
赤字子会社も黒字子会社もグループ全体で合算して税金を納めることができるようになった。
商法改正
委員会等設置会社,社外取締役の配置,執行役員制が選択できるようになった。

変わるグループ内会社関係

これまではグループ内の会社は親会社と子会社という表現からも分かるように,相互にもたれあう関係であった。親会社は戦略的意思決定権限を子会社に委譲して放任するが,資本と幹部の人事権を押さえているので求心力を保つ。逆に子会社は資金や人材を親会社に依存していた。ところがグループ経営では,持ち株会社と事業会社の関係に変化する。



グループ経営機構改革とグループ本社(GH)

たとえば,ソニーは事業持ち株会社であり,NTTはR&D部門を本社に置く純粋持ち株会社である。持ち株会社化とはグループ経営機構改革を意味し,具体的には以下の3つのことを行う。
.バナンスとマネジメントの分離
▲哀襦璽徊楴劼寮鞍
事業部別マネジメント体制の構築

ガバナンスを担う取締役会にはCEOのような内部者のみならず社外取締役が入る。執行を担うCEOは社外取締役を主体とする指名委員会で決定される。グループ本社のトップはCEOであり,その配下に財務や情報,戦略など機能別にオフィサーが配置される。ドメインに応じた事業担当オフィサーのもとに事業会社を配置する。典型的なグループ経営機構を図解すれば次のようなスライドとなる。



ソニーのグループ経営改革

グループ経営の目的は,分化と統合という二律背反するものをグループ経営の高度化によって達成していくことにある。たとえばソニーのグループ経営の方針は「分極と統合の経営」であり,事業会社が自律的に分極していくが戦略的意思決定権は持ち株会社(グループ本社)が押さえている。

ソニーには事業ドメインが5つあるが,ドメインを統合する機能として,「グローバル・ハブ」というグループ本社が置かれている。この5つのドメイン間のシナジーを創出するためにプラットフォームが置かれている。プラットフォームは2つある。ひとつが戦略プラットフォームであり,グループ全体の価値創造のためにさまざまな戦略立案やシンクタンク機能を持ち,5つの基幹事業相互の連携を促進する。この中心メンバーは,CEOとCOO及びCFOの3名である。彼らがトップマネジメントチームになって,その配下に非常に高度な戦略担当スタッフとシンクタンク機能を配して,グループ全体の戦略を創出していく。
もうひとつが経営のプラットフォームであり,事業会社のスタッフ部門(経営,財務,法務,知財,人事,総務,情報システム,広報,渉外,環境,デザインなど)をグループ本社に集約し,より専門化する。

グループ本社のプラットフォーム

ソニーやNTTの事例を参考にすれば,グループ本社には次のスライドのような4つのプラットフォームが考えられるのではないかと思う。



グループ本社の人材経営の役割

ミシガン大学ビジネススクールのディビッド・ウルリッチの人材経営の4つの役割の考え方は,このグループ本社のプラットフォームの考え方と非常にフィットする 。一般には,採用,報酬管理,就業条件管理,退職,労使調整という機能によって,人事部の役割を定義する。これは人事部本位のdoableである。しかしウルリッチは,人事部の役割を,人材を生かすというパラダイムで定義づけ,人事部が経営及び社内の人々に対して何をもたらすことができるのかという考え方,すなわちdeliverableを提唱している。

この定義をグループ本社人事部の設計に照らし合わせて考えてみると,中心には価値のプラットフォームがあり,3角形の点に戦略パートナー,チェンジエージェント,管理のエキスパートという役割が配される。



人事業務の分担の変化

人事部の業務には次の3つがある。企画業務,管理業務,及びサービス業務である。これらを,本社人事部,事業部人事部,ラインマネジャーの3つの主体が分担している。グループ経営の高度化によって分社やグループ本社が新設されれば,企画業務は本社人事部に集約されてくる。一方で,管理業務は本社から事業部やマネジャーに移行していく。サービス業務は,いったん本社に集約した後に,外に出して共有化する。

たとえば三菱商事では,サービス業務を全てスピンアウトし,企画業務を本社に集約化した。人事部は経営企画部門の中にある。管理業務はどんどん現場に移行している。(平野光俊)
posted by: NOMA第3期人材マネジメント研究会 第5回定例会報告 | 2008.01.09 Wednesday | 22:34 |
2.問題意識:なぜいま自律的なキャリア開発が喧伝されているのか
いま,産業界が望ましいと考える人材像は,「自律的にキャリア開発をしていく人材」である。とくに慶應大学の高橋俊介先生の『キャリア・ショック』(1)の発刊以降,みな同じことを言うが,なぜいま巷で自律的キャリアが盛んに喧伝されるようになったのか。一つの説明の仕方は,人事管理の方針が雇用保障からエンプロイアビリティ(employability)の重視へと変化する中で,「会社は社員に能力開発の機会を与えるが,それをものにするかどうかは個人の責任である」とする新しい社会的契約関係が成立したからだ,というものである。果たして本当にそのような理由から自律的キャリアが唱えられるようになったのか。私はむしろ異なる説明の仕方があると思う。すなわち経営戦略や人事管理の変化がキャリア自律を要請しているのではないか。

経営戦略の変化は,グループ経営の強化によって本社人事部の役割の変化が起こり,ピープルマネジメントの主体が人事部からラインマネジャーに移行しつつあるということである。人事管理の変化は,成果主義のテーマのもとに職能資格制度から職務等級制度へ転換しつつあることである。これも同様に,ピープルマネジメントの主体を人事部からマネジャーに移行させる圧力となる。それにともなって,後で詳しく述べるが,本社人事部とラインの間の人事情報の非対称性が拡大する。

本日お話しすること

つまり事業会社への権限委譲や成果主義人事への移行は,必然的に人事権を本社人事部からラインへ委譲する。それにともなって人事情報の非対称性と粘着性が高まり,その対応として個人にキャリア自律を要請されるようになる,という考え方である。これが本日お話しするテーマである。(平野光俊)

(1) 高橋俊介 2000 『キャリア・ショック』 東洋経済新報社
posted by: NOMA第3期人材マネジメント研究会 第5回定例会報告 | 2007.08.11 Saturday | 05:03 |
1.組織内キャリア発達の規定因
本年度のこの人材マネジメント研究会は,組織心理学を基礎としたミクロ(個人のキャリア)の話題が中心であったが,本年度の最終回ということもあり,私はミクロとマクロ(戦略)および人事管理を統合して話したい。

まずキャリアとは時間の経過をともなう移行過程である。つまり,個人が組織に入り,移行過程を経て,異なるキャリア結果に到達する。昇進などのキャリア結果を目的変数として,それが何ゆえに異なる結果になったのかということを,移行過程に焦点をあてて分析するのがキャリア研究のアプローチである。

組織内キャリア発達の規定因

たとえば,名古屋大学の若林満先生らは,1980年にある百貨店に入社した80数名の新人の3年経過後の人事考課を目的変数として,移行過程におけるどんな要因が人事考課の違いをもたらしたのかを調査した。そこで分かったことは,最初の上司との関係のあり方によって3年後の人事考課の良し悪しが決まるということであった 。この研究は,スライドでいうと,組織の因子(上司との垂直的交換関係)とキャリア結果の関係を明らかにしたものである。

移行過程に対するアプローチには,社会的因子,経済的・一般的因子というもっとマクロな要素もあるが,本日は組織の中のキャリアを考えることが目的であるので,組織因子の変数である経営戦略と人事管理がキャリア発達にどのように関わっているのかについてお話したい。(平野光俊)
posted by: NOMA第3期人材マネジメント研究会 第5回定例会報告 | 2007.07.04 Wednesday | 00:17 |
NOMA第3期人材マネジメント研究会 第5回定例会報告
先日、金井壽宏からアナウンスがございましたとおり、NOMA第3期人材マネジメント研究会 第5回定例会についてお届けいたします。定例会は平成14年10月22日に開催され、平野光俊(神戸大学大学院経営学研究科 准教授)がゲストスピーカーを務めました。

平野のスピーチを7回、会場の討議を2回、計9回に渡って、本ブログ上で連載いたします。

■「キャリア,人事,戦略を統合的に考える」(平野光俊)
1.組織内キャリア発達の規定因 [2007年7月4日up]
2.問題意識:なぜいま自律的なキャリア開発が喧伝されているのか [2007年8月11日up]
3.グループ経営の変化 [2008年1月9日up]
4.人事管理の変化 [2008年6月4日up]
5.人事情報の非対称性
6.人事情報の粘着性
7.人事情報の非対称性と粘着性を解消する対策

■会場の討議
1.金井のコメント
2.全体討議
posted by: NOMA第3期人材マネジメント研究会 第5回定例会報告 | 2007.06.26 Tuesday | 22:52 |